「佐野さん、よかったら夕飯食べていってください。すぐに作りますから」
「えっ、でも、せっかくの誕生日なのに」
どこかレストランに食べに行った方がいいんじゃないかと思ったが、日和は鼻歌を歌いながらエプロンを着け、まな板の上で野菜を切り始めた。
トントントン……という懐かしい音に、日向は二人で過ごした日々を思い出す。
それだけで心が穏やかになるのを感じた。
「どうぞ。佐野さんの好きな辛いやつです。あとは、ぶりの照り焼きと味噌田楽も。なんか多国籍ですみません」
「いや、またこれが食べられるなんて嬉しい。いただきます」
「はい、召し上がれ」
ひとり暮らしに戻ってからめっきり食が細くなっていたが、日和の作る料理ならいくらでも食べられる気がした。
「佐野さん、相変わらずいい食べっぷりですね。作り甲斐があります」
「だってうまいからな。でもごめん。せっかくの誕生日に、料理を作らせてしまった」
「とんでもない。私にとって最高の誕生日になりました。素敵なプレゼントをたくさん、本当にありがとうございます」
「いや、喜んでもらえて良かった」
食事を終えると、日和は早速フラワーアレンジメントを始める。
日向はお茶を飲みながら、その様子を見守った。
背筋を伸ばして正座し、綺麗な所作で花を挿していく日和は、惚れ惚れするほど凛としている。
(こんなにも大人びた表情するんだ。感覚を研ぎ澄ましているのが、かっこいい)
何度も角度を変えながら真剣な眼差しで花を整え、日和は最後に納得したように頷いた。
「出来ました」
「うん、いいな。花が生き生きして見える」
「ふふっ、ありがとうございます」
「やっぱり俺も部屋に花が欲しくなった。買って帰ろうかな」
我ながら似合わないことを口にした、と顔をしかめていると、日和が「はい、是非」と笑いかけてきた。
「どこに飾ろうかな。ジョリーはここがいいかな?日当たりいいし」
ひとり言をいいながら、日和はアメリカンブルーの陶器を出窓に置く。
日向は、ずっと気になっていたことを切り出した。
「なあ、ジョリーってどこからつけたんだ?」
途端に日和はピタッと手を止める。
よく見ると、頬が真っ赤に染まっていた。
(えっ、なんで赤くなる?言いにくいことなのか?なんでだ?)
日向の頭の中は、更に疑問でいっぱいになる。
日和は視線を落としたまま背を向けた。
「あっ、えっと、あの。たまたま、思い浮かんで……」
絶対違うだろ、と突っ込みたくなるほど、日和はたどたどしく取り繕った。
「だめ、ですかね?ジョリーって」
「いや、実家で飼ってるうちの犬もジョリーなんだ」
「あ、ああ!そうでしたか。偶然ですねえ、あはは!」
大根役者を再現したような棒読みのセリフと乾いた笑いに、日向はまじまじと日和を見やる。
(もしかして、うちのジョリーを知っていた?でも俺は話したことないし。あ、もしや!)
ようやく日向は思い出す。
確か日和がうちに来て2日目の夜だったか。
酔って同じベッドに入ってしまい、日和をジョリーだと勘違いしたことを。
(あの夜、俺、なんか言ったのか?宇野をジョリーと間違えて?)
「えっ、でも、せっかくの誕生日なのに」
どこかレストランに食べに行った方がいいんじゃないかと思ったが、日和は鼻歌を歌いながらエプロンを着け、まな板の上で野菜を切り始めた。
トントントン……という懐かしい音に、日向は二人で過ごした日々を思い出す。
それだけで心が穏やかになるのを感じた。
「どうぞ。佐野さんの好きな辛いやつです。あとは、ぶりの照り焼きと味噌田楽も。なんか多国籍ですみません」
「いや、またこれが食べられるなんて嬉しい。いただきます」
「はい、召し上がれ」
ひとり暮らしに戻ってからめっきり食が細くなっていたが、日和の作る料理ならいくらでも食べられる気がした。
「佐野さん、相変わらずいい食べっぷりですね。作り甲斐があります」
「だってうまいからな。でもごめん。せっかくの誕生日に、料理を作らせてしまった」
「とんでもない。私にとって最高の誕生日になりました。素敵なプレゼントをたくさん、本当にありがとうございます」
「いや、喜んでもらえて良かった」
食事を終えると、日和は早速フラワーアレンジメントを始める。
日向はお茶を飲みながら、その様子を見守った。
背筋を伸ばして正座し、綺麗な所作で花を挿していく日和は、惚れ惚れするほど凛としている。
(こんなにも大人びた表情するんだ。感覚を研ぎ澄ましているのが、かっこいい)
何度も角度を変えながら真剣な眼差しで花を整え、日和は最後に納得したように頷いた。
「出来ました」
「うん、いいな。花が生き生きして見える」
「ふふっ、ありがとうございます」
「やっぱり俺も部屋に花が欲しくなった。買って帰ろうかな」
我ながら似合わないことを口にした、と顔をしかめていると、日和が「はい、是非」と笑いかけてきた。
「どこに飾ろうかな。ジョリーはここがいいかな?日当たりいいし」
ひとり言をいいながら、日和はアメリカンブルーの陶器を出窓に置く。
日向は、ずっと気になっていたことを切り出した。
「なあ、ジョリーってどこからつけたんだ?」
途端に日和はピタッと手を止める。
よく見ると、頬が真っ赤に染まっていた。
(えっ、なんで赤くなる?言いにくいことなのか?なんでだ?)
日向の頭の中は、更に疑問でいっぱいになる。
日和は視線を落としたまま背を向けた。
「あっ、えっと、あの。たまたま、思い浮かんで……」
絶対違うだろ、と突っ込みたくなるほど、日和はたどたどしく取り繕った。
「だめ、ですかね?ジョリーって」
「いや、実家で飼ってるうちの犬もジョリーなんだ」
「あ、ああ!そうでしたか。偶然ですねえ、あはは!」
大根役者を再現したような棒読みのセリフと乾いた笑いに、日向はまじまじと日和を見やる。
(もしかして、うちのジョリーを知っていた?でも俺は話したことないし。あ、もしや!)
ようやく日向は思い出す。
確か日和がうちに来て2日目の夜だったか。
酔って同じベッドに入ってしまい、日和をジョリーだと勘違いしたことを。
(あの夜、俺、なんか言ったのか?宇野をジョリーと間違えて?)



