「俺はあの子とはまったく話が噛み合わない。大体あんなにスマホが使えないなんて、ほんとに22歳なのか?ピンチもスワイプも通じなくて、にゅーんとか言うし、地図アプリ開いてんのにスマホぐるぐる回すし。もうさっぱり理解出来ん!」
椿と慎一は一瞬ぽかんとしたあと、同時に笑い出す。
「あはは!なんか目に浮かぶ。確かにひよちゃん、機械オンチなとこあるもんね。パソコンの入力、全部人差し指で打つし。それに頭で考えるより感覚で動くタイプ」
「そうそう。あと、説明もほとんど擬音語で済ませる。淡々と論理的に説明する日向とは、そりゃ話も合わんだろ」
「名前は似てるのにね。宇野日和と佐野日向って」
「それも面白いよな。ひよちゃんは完全に右脳派で、名字は宇野。日向は真逆の左脳派で名字は佐野」
「うんうん、よく出来てるわー」
楽しそうに笑う二人に、日向はふてくされてそっぽを向く。
すると椿が身を乗り出した。
「でもさ、日向だってひよちゃんのこと言えないよ。ほら、地図の読めない女の子と空気の読めない男の子っていうでしょ?ひよちゃんが地図読めないなら、日向は女心が読めないもん」
日向はようやくボソッと「なんでだよ?」と呟く。
「だって知ってるもーん。日向のこれまでの恋愛遍歴」
あー、確かに、と慎一も思い出したように宙に目をやった。
「彼女に『誕生日プレゼント何が欲しい?』って聞いたら『何もいらない。あなたと一緒にいられるだけでいい』って言われたから、ほんとに用意しなかったんだよな。で、後日フラれたと」
「それのどこが変なんだよ。いらないって言われたからその通りにしたんだぞ?」
「うわー、日向、まだ自分が正しいと思ってんのか?」
「当たり前だ。しかも怒ってるように見えたから『なんで怒ってんの?』って聞いたら、怒りながら『怒ってない』って言うんだぜ?それも分からん」
「で、そのあとフラれたんだよな」
「ああ。何がなんだか訳が分からん」
やれやれと、慎一は椿に肩をすくめて見せる。
椿も苦笑いしてから口を開いた。
「日向、女の子はね、言わなくても分かってほしいことがあるのよ」
「そんなの分かるか!エスパーじゃないんだから」
「はっきり口にしなくても、よく見てれば女の子のサインに気づくわよ。雑誌のジュエリーの広告をじっと見てたり、テレビドラマでプロポーズのシーンにキュンとしてたり。そんな彼女の様子から、あ、こういうのが好きなんだなって気づいてあげなきゃ。プレゼントはいらないって言ってたけど、これをあげたら喜ぶだろうなって」
椿が話せば話すほど、日向は頭を抱え込む。
「俺、そういうのが全く分からん。これが欲しい、あれが食べたい、あそこに行きたいって、全部言ってくれないと」
「言わなくても分かってほしいものなのよ、女の子って。自分の為を思ってプレゼントを選んでほしいし、素敵な場所に連れて行ってほしい。それが自分の好みにぴったりだと、『私のことよく分かってくれてる!』って、すごく嬉しくなるのよ」
「無理……。だから俺、恋愛するのやめたもん」
「あーらら。それでことごとく告白断ってるんだ。噂になってるよ?イケメンの佐野さんにアタックしても玉砕するだけだって」
そんなの知らん、と日向は心の中でひとりごちる。
「そんなに難しいことかな。ね、慎一」
椿に聞かれて、慎一は「うーん……」と腕を組んだ。
「まあ、俺も男だから日向の言ってることも分からなくはない。けど、だからって女の子に非があるとも思えない。要はさ、日向はまだ本気で誰かを好きになったことがないんじゃないか?いつも相手に告白されて、断り切れずにつき合ってただろ?本気で自分が好きになった相手なら、少しでも喜んでほしいってあれこれ考えるようになる。プレゼントはいらないって言われても、何かを贈りたくなる。街を歩いてても彼女の視線の先を追って、こんなレストランが好きなんだろうな、とか、こういうアクセサリーが欲しいんだろうなって、色んな情報をキャッチしようとするんだ」
うんうん!と椿も頷く。
「自然とそうなるよね!それが理想。どちらかが無理したら、結局は上手くいかなくて別れることになると思う。だからさ!今は女心が読めない日向も、本当に好きな子が出来たら、自然と相手のことを知ろうとするわよ、きっと」
「聞いてるだけで面倒くさそう。俺、そこまでして恋愛する気ないから」
そう言うと日向はグイッとビールを煽り、ちょうど席を移動してきた別の同期と話し出す。
椿と慎一も、仕方ないかとばかりにため息をつくと、場所を変えて他の同期と飲むことにした。
椿と慎一は一瞬ぽかんとしたあと、同時に笑い出す。
「あはは!なんか目に浮かぶ。確かにひよちゃん、機械オンチなとこあるもんね。パソコンの入力、全部人差し指で打つし。それに頭で考えるより感覚で動くタイプ」
「そうそう。あと、説明もほとんど擬音語で済ませる。淡々と論理的に説明する日向とは、そりゃ話も合わんだろ」
「名前は似てるのにね。宇野日和と佐野日向って」
「それも面白いよな。ひよちゃんは完全に右脳派で、名字は宇野。日向は真逆の左脳派で名字は佐野」
「うんうん、よく出来てるわー」
楽しそうに笑う二人に、日向はふてくされてそっぽを向く。
すると椿が身を乗り出した。
「でもさ、日向だってひよちゃんのこと言えないよ。ほら、地図の読めない女の子と空気の読めない男の子っていうでしょ?ひよちゃんが地図読めないなら、日向は女心が読めないもん」
日向はようやくボソッと「なんでだよ?」と呟く。
「だって知ってるもーん。日向のこれまでの恋愛遍歴」
あー、確かに、と慎一も思い出したように宙に目をやった。
「彼女に『誕生日プレゼント何が欲しい?』って聞いたら『何もいらない。あなたと一緒にいられるだけでいい』って言われたから、ほんとに用意しなかったんだよな。で、後日フラれたと」
「それのどこが変なんだよ。いらないって言われたからその通りにしたんだぞ?」
「うわー、日向、まだ自分が正しいと思ってんのか?」
「当たり前だ。しかも怒ってるように見えたから『なんで怒ってんの?』って聞いたら、怒りながら『怒ってない』って言うんだぜ?それも分からん」
「で、そのあとフラれたんだよな」
「ああ。何がなんだか訳が分からん」
やれやれと、慎一は椿に肩をすくめて見せる。
椿も苦笑いしてから口を開いた。
「日向、女の子はね、言わなくても分かってほしいことがあるのよ」
「そんなの分かるか!エスパーじゃないんだから」
「はっきり口にしなくても、よく見てれば女の子のサインに気づくわよ。雑誌のジュエリーの広告をじっと見てたり、テレビドラマでプロポーズのシーンにキュンとしてたり。そんな彼女の様子から、あ、こういうのが好きなんだなって気づいてあげなきゃ。プレゼントはいらないって言ってたけど、これをあげたら喜ぶだろうなって」
椿が話せば話すほど、日向は頭を抱え込む。
「俺、そういうのが全く分からん。これが欲しい、あれが食べたい、あそこに行きたいって、全部言ってくれないと」
「言わなくても分かってほしいものなのよ、女の子って。自分の為を思ってプレゼントを選んでほしいし、素敵な場所に連れて行ってほしい。それが自分の好みにぴったりだと、『私のことよく分かってくれてる!』って、すごく嬉しくなるのよ」
「無理……。だから俺、恋愛するのやめたもん」
「あーらら。それでことごとく告白断ってるんだ。噂になってるよ?イケメンの佐野さんにアタックしても玉砕するだけだって」
そんなの知らん、と日向は心の中でひとりごちる。
「そんなに難しいことかな。ね、慎一」
椿に聞かれて、慎一は「うーん……」と腕を組んだ。
「まあ、俺も男だから日向の言ってることも分からなくはない。けど、だからって女の子に非があるとも思えない。要はさ、日向はまだ本気で誰かを好きになったことがないんじゃないか?いつも相手に告白されて、断り切れずにつき合ってただろ?本気で自分が好きになった相手なら、少しでも喜んでほしいってあれこれ考えるようになる。プレゼントはいらないって言われても、何かを贈りたくなる。街を歩いてても彼女の視線の先を追って、こんなレストランが好きなんだろうな、とか、こういうアクセサリーが欲しいんだろうなって、色んな情報をキャッチしようとするんだ」
うんうん!と椿も頷く。
「自然とそうなるよね!それが理想。どちらかが無理したら、結局は上手くいかなくて別れることになると思う。だからさ!今は女心が読めない日向も、本当に好きな子が出来たら、自然と相手のことを知ろうとするわよ、きっと」
「聞いてるだけで面倒くさそう。俺、そこまでして恋愛する気ないから」
そう言うと日向はグイッとビールを煽り、ちょうど席を移動してきた別の同期と話し出す。
椿と慎一も、仕方ないかとばかりにため息をつくと、場所を変えて他の同期と飲むことにした。



