恋愛日和〜真逆の二人が惹かれ合うまで〜

15時になると日向はホワイトボードに「外回り、直帰」と記入し、挨拶してオフィスを出る。

数年のつき合いになるクライアントを訪問し、顔馴染みの担当者と和やかに打ち合わせを終えた。

「佐野さん、このあと一緒に飲みに行きませんか?」

別れ際にそう言われて日向は躊躇した。

「お誘いは嬉しいのですが、これからまだ仕事がありまして……。申し訳ありません」
「そうでしたか、残念。ではまた次の機会に」
「はい、ありがとうございます」

お辞儀をして外に出ると、時刻は18時を過ぎていた。

(宇野、そろそろ帰る頃かな)

そんなことを考えながら最寄り駅に行くと、直結しているショッピングモールを覗いてみる。
仕事帰りらしい女性客で賑わう中を当てもなく歩いていると、ふと店頭のディスプレイが目に入った。

(これ、宇野が着けてたエプロンだ)

花柄のオフホワイトのエプロンは、肩紐とリボンがピンク色で日和によく似合っていた。
日向は、店内に足を踏み入れる。
食器や小物、アクセサリーやバッグも並ぶ雑貨屋のようだった。

(このマグカップ、エプロンの柄とお揃いなんだな)

マグカップを手に、日向はしばし考える。
意を決してレジに向かうと、誕生日プレゼント用のラッピングを頼んだ。

買ったからには渡すしかない。
そう思いながら店を出て、どうやって渡そうかと考える。
さり気なく日和の予定を聞いてみることにした。

『お疲れ様。もう仕事上がったか?』

メッセージを送るとすぐに既読になるが、返事はなかなか来ない。
じっと画面を見つめていると、ようやくポンと表示された。

『お疲れ様です』
『今、』
『おふぃすを』
『オフィス、を、でて』

ひとつずつ、ポツリポツリと来る返事に、日向は気が急く。

(ひらがなでもいいから、早く!)

思わずスマートフォンを握る手に力を込めた。

『でんしやに、乗るところで』
『す』

ガクッとズッコケるが、とにかく状況は分かった。
恐らくこのままマンションに帰るのだろう。

日向は「お疲れ様」のスタンプをひとつ送ると、足早に駅へと向かった。