2度目の総合病院の訪問日が決まり、日向と日和は慎一を交えて会議室で打ち合わせをしていた。
「しっかしさすがは日向だな。こんな大きな総合病院との案件を取ってくるなんてさ。うちは印刷会社だぜ?お前、どの業界でも営業かけられるんだな」
「医療機器に携わってるんだから、別に驚くほどでもないだろ?」
「いや、直接病院のドクターとやり取りしながらソフトを開発するなんて、俺ならどんなに頼み込んでも無理だ。すごいよなー、我が社の営業さんは。どうりでうちが業界トップになる訳だわ」
しきりに感心しながら、慎一は手元の資料をトントンと揃える。
「じゃあ次回の訪問は、この3人で行くのか?」
「ああ。俺達はこれと言ってすることはないけどな。お前を紹介するくらいだ」
すると日和が、あの……と口を開く。
「それでしたら、私と飯田さんだけで行きましょうか?佐野さん、お忙しいですよね?」
「え?でも、二人で大丈夫か?」
「はい。次回会うのは奥田先生だけですし」
「…………いや、やっぱり俺も行く」
「は?」
日和がキョトンとするが、日向は素知らぬフリで続けた。
「あの病院には今後俺も同行する。もしくは慎一ひとりで行かせる」
「なんだ、それ。ひよちゃんと俺を二人きりにさせたくないのか?信用ないなー、俺」
「いや、お前は信用してる」
「じゃあ誰を信用してないんだよ?」
「…………打ち合わせは以上だ。当日よろしくな」
「おい、日向!」
慎一の声を背中に聞きつつ、日向は立ち上がって会議室を出る。
廊下を歩きながらこのあとのスケジュールを思い出し、腕時計に目を落とした。
(15時から外回りで、今日は直帰だな。ん?)
時刻の横の日付がふと気にかかる。
(10月14日か、なんかあったような……。あ!)
日和が使っているパスワード、hiyori1014を思い出した。
(今日はあいつの誕生日か)
何か予定はあるのだろうか?
服装も普段と変わらないように見えたし、仕事もいつも通りこなしている。
このまま何もなく、定時になればマンションに帰るのだろうか?
『夜、一人でいると怖くなるんです』
そう言ってポロポロと涙をこぼした日和を思い出す。
(もし今夜も何もなく一人で部屋にいたら?寂しさに襲われて涙が込み上げてきたら?そんな誕生日はだめだ)
そう思い、立ち止まって会議室を振り返る。
日和を夕食にでも誘おうか?
いや、既に誰かと約束しているかもしれない。
友達や、あのドクターとか?
想像した途端、顔をしかめた。
だがどうする訳にもいかない。
日向は拳を握りしめて気持ちを落ち着かせると、再びオフィスへと歩き始めた。
「しっかしさすがは日向だな。こんな大きな総合病院との案件を取ってくるなんてさ。うちは印刷会社だぜ?お前、どの業界でも営業かけられるんだな」
「医療機器に携わってるんだから、別に驚くほどでもないだろ?」
「いや、直接病院のドクターとやり取りしながらソフトを開発するなんて、俺ならどんなに頼み込んでも無理だ。すごいよなー、我が社の営業さんは。どうりでうちが業界トップになる訳だわ」
しきりに感心しながら、慎一は手元の資料をトントンと揃える。
「じゃあ次回の訪問は、この3人で行くのか?」
「ああ。俺達はこれと言ってすることはないけどな。お前を紹介するくらいだ」
すると日和が、あの……と口を開く。
「それでしたら、私と飯田さんだけで行きましょうか?佐野さん、お忙しいですよね?」
「え?でも、二人で大丈夫か?」
「はい。次回会うのは奥田先生だけですし」
「…………いや、やっぱり俺も行く」
「は?」
日和がキョトンとするが、日向は素知らぬフリで続けた。
「あの病院には今後俺も同行する。もしくは慎一ひとりで行かせる」
「なんだ、それ。ひよちゃんと俺を二人きりにさせたくないのか?信用ないなー、俺」
「いや、お前は信用してる」
「じゃあ誰を信用してないんだよ?」
「…………打ち合わせは以上だ。当日よろしくな」
「おい、日向!」
慎一の声を背中に聞きつつ、日向は立ち上がって会議室を出る。
廊下を歩きながらこのあとのスケジュールを思い出し、腕時計に目を落とした。
(15時から外回りで、今日は直帰だな。ん?)
時刻の横の日付がふと気にかかる。
(10月14日か、なんかあったような……。あ!)
日和が使っているパスワード、hiyori1014を思い出した。
(今日はあいつの誕生日か)
何か予定はあるのだろうか?
服装も普段と変わらないように見えたし、仕事もいつも通りこなしている。
このまま何もなく、定時になればマンションに帰るのだろうか?
『夜、一人でいると怖くなるんです』
そう言ってポロポロと涙をこぼした日和を思い出す。
(もし今夜も何もなく一人で部屋にいたら?寂しさに襲われて涙が込み上げてきたら?そんな誕生日はだめだ)
そう思い、立ち止まって会議室を振り返る。
日和を夕食にでも誘おうか?
いや、既に誰かと約束しているかもしれない。
友達や、あのドクターとか?
想像した途端、顔をしかめた。
だがどうする訳にもいかない。
日向は拳を握りしめて気持ちを落ち着かせると、再びオフィスへと歩き始めた。



