恋愛日和〜真逆の二人が惹かれ合うまで〜

「おっ、佐野さん!お疲れ様です。ひよちゃんも」

居酒屋には、同じく直行組が数人先に着いていた。

「お疲れ様です」
「ひよちゃん、ここに座りなよ」
「はい、失礼します」

手招きされてあっという間に取り囲まれる日和に、日向はまたしても不機嫌になる。

「ひよちゃん、最近服装がぐっと大人っぽくなったよね」
「あ、これはパブリッシングの椿さんに選んでいただいたからで……」
「そうなんだ。でも断然こういう服の方がいいよ、ひよちゃん」
「ありがとうございます」

やがてガヤガヤと部長と他のメンバーも現れた。
早速ビールで乾杯する。

「ひよちゃーん!もっと飲みなよ」

日和の周りには次から次へとビールを片手に男性陣が寄ってきた。

「おい、あんなり宇野に飲ませるな」

思わず口出しするが、「大丈夫です!帰りは送るので」と軽く聞き流される。
それが一番危ないだろ!と、日向は自分が日和を送ろうと心に決めた。

普段外回りが多くて話す機会がないせいか、とにかく皆は日和に話しかける。
日和も愛想良くビールを注いで回った。

「部長、お疲れ様です」
「おー、ありがとう。どうだい?佐野さん、宇野くんとの仕事は。あっ、違った、佐野さんだ。ん?違うな。宇野くん?」

あはは!と他のメンバーが笑い出す。

「紛らわしいから、部長もひよちゃんって呼んだらどうですか?」
「いや、さすがにそれはいかんだろ」
「でも俺達みんな、ひよちゃんって呼んでますよ?」
「君達はよくても、私が呼んだらセクハラだろ?」
「じゃあせめて、日和ちゃんはどうですか?」

ピキッと日向のこめかみに筋が浮かぶ。

「日和はだめ!」

…………は?と、一斉に皆は固まった。

「どうしました?佐野さん」
「いや、別に。なんでもない」

うつむいて取り繕う。

(とにかく日和はだめだ!)

日向は、グイッとビールを煽った。