恋愛日和〜真逆の二人が惹かれ合うまで〜

タオルで頭を乾かしながらリビングに戻ると、テーブルに切り花を並べた日和が真剣に花を生けていた。
先程の緑色のスポンジに、一本ずつバランスを確かめるようにじっくりと吟味しながら花を挿している。

「へえ、生け花とか習ってたのか?」

日向が声をかけるが、日和は集中しているのかまったく反応しない。
スイッチが入ったなと、日向は日和の隣に座ってじっと様子を見守った。
どうやら大ぶりの鮮やかな花を中心に置いて、その周りを彩り良く飾っているらしい。

(どういう比率のバランスなんだ?3対7くらい?)

見ているだけではさっぱり法則が分からない。
やがて華やかにアレンジメントが仕上がり、日和は満足そうに頷く。
優しい笑みを浮かべるその横顔に見とれていると、ふと日和が日向に目を向けた。

「ひゃあ!」

驚いて仰け反る日和を、日向が腕を伸ばして支える。

「おっと。またこのパターンかよ」
「すみません!いきなりでびっくりして」
「いきなりじゃない。ずっと隣に座ってた」
「ええ!?ほんとに?」
「ああ。声かけたけど聞こえてなかったみたいだな」
「すみません……」

日和が身を縮こめると、日向はアレンジメントに目をやりながら尋ねた。

「これって、どういう法則で花を挿すんだ?」
「は?法則、とは?」
「例えばバランスの比率だよ。一番目を引く花を真ん中に置くのは分かる。でもわざと少し中心からずらしてるんだな。で、その周りを飾る花を対角線上に配置していく。違うか?」
「いえ、あの。さっぱり分かりません」

今度は日向が、は?と聞き返す。

「じゃあどうやって生けてるんだ?」
「えっと、適当に」
「適当に!?それって、どうやって?」
「あの……。何も考えないから適当であって、説明出来たら適当ではありません」
「はあ、すごいな。適当に出来るって、ある意味才能だな」
「それは、褒められてるのでしょうか?」
「もちろん」
「ありがとう、ございます……」

会話は噛み合わないが、アレンジメントを綺麗だと思う気持ちは同じらしかった。

「いいな、花がある空間って」
「はい、心が癒やされます」
「ああ、そうだな。今まで知らずにいた。花ってこんなに気持ちが安らぐものなんだ。みずみずしいし、香りもいい」
「ええ。生きてますからね」

二人で花を眺めながら静かに語り合う。
それもまた心が安らぐものだと、日向は感じていた。