恋愛日和〜真逆の二人が惹かれ合うまで〜

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ベッドでぐっすり眠っていた日和は、寝返りを打った時にふと温かさを感じてぼんやりと目を覚ます。

(あれ?なんだろ、これ。おっきなぬいぐるみ?)

寝ぼけたまま、目の前にあるぬくぬくした物体に身を寄せた。

(はあ、気持ちいい)

思わずスリスリと頬を寄せると、にゅっと腕が伸びてきて抱きしめられる。

(安心するなあ……)

大きな腕に身を委ねてピタリと寄り添うと、ギュッと強く抱き寄せられ、額にチュッと柔らかい何かが触れた。

(…………え?)

さすがにおかしい、と日和の意識が一気にクリアになる。
ぱちぱちと瞬きをしてから、恐る恐る顔を上げた。

「さ、佐野さん!」

目の前に迫る日向の寝顔に、日和は慌てて身を引く。
だが日向は更に腕に力を込めて日和を抱きしめた。
日向の身体からは、かすかにアルコールの匂いがする。

(酔って恋人と勘違いしてるのかも?)

日和は必死に日向の胸を押し返した。

「佐野さん!私、宇野です!」
「ん……、宇野」
「そうです、宇野です。佐野さんの彼女じゃありません」
「お前……、ジョリーか」

そう言って日向は日和の頭をわしゃわしゃとなでた。

「ジョ、ジョリー?って、ワンちゃんですか?」
「ジョリー、可愛いやつ……。白くて、ふわふわ」

顔を寄せて耳元でささやかれ、日和はドキッとする。

「佐野さん!私、人間の宇野です!」

何度も身をよじるが、その度にグッと抱きしめられ、ついには両腕でがっちりホールドされてしまった。

(う、動けない……。男の人ってこんなに力が強いんだ)

やれやれと日和は身体の力を抜く。
どうしたものかと思っているうちに眠気に襲われ、抱きしめられる温かさと安心感からスーッと眠りに落ちていった。