「佐野さん、すみません!お待たせしました」
「ん、じゃあ行くぞ」
二人でオフィスを出ると、エレベーターで1階に下りる。
初夏の日射しがたっぷり降り注ぐ吹き抜けのロビーを横切っていると、ピカピカに磨き上げられたフロアに虹のような光の帯が浮かんでいた。
「……綺麗」
ポツリと呟く日和の視線の先を追い、日向も頷いた。
「ああ、プリズムが生み出す太陽光のスペクトルだな」
「スペクトル……、ですか?」
「そう。太陽の光が三角柱のガラスのプリズムに当たって、虹みたいな光の帯が現れるんだ。太陽光って単に白っぽく見えるけど実は色んな色が混ざってて、プリズムを通すことで屈折して分かれる。この現象を発見したのがニュートンで、光の帯のことをスペクトルと名付けたんだ」
「…………へえ」
気の抜けた相槌を打つ日和を、日向はジロリと横目で見た。
「さては右から左へスルーだな?」
「す、すみません。ただ綺麗だな、としか考えられなくて……」
「この現象は何だろう、とか思わないのか?」
「はい、全く」
ガクッと日向は肩を落とす。
「まあ、そうだろうな。こういう話をして、興味深く聞いてくれる女子に会ったことない」
「そんなことは……。私が疎いだけだと思います」
「いや、いい。慣れてるから。それより急ごう」
「はい」
二人で会社のエントランスを出ると、すぐ近くの駅から地下鉄に乗った。
「ん、じゃあ行くぞ」
二人でオフィスを出ると、エレベーターで1階に下りる。
初夏の日射しがたっぷり降り注ぐ吹き抜けのロビーを横切っていると、ピカピカに磨き上げられたフロアに虹のような光の帯が浮かんでいた。
「……綺麗」
ポツリと呟く日和の視線の先を追い、日向も頷いた。
「ああ、プリズムが生み出す太陽光のスペクトルだな」
「スペクトル……、ですか?」
「そう。太陽の光が三角柱のガラスのプリズムに当たって、虹みたいな光の帯が現れるんだ。太陽光って単に白っぽく見えるけど実は色んな色が混ざってて、プリズムを通すことで屈折して分かれる。この現象を発見したのがニュートンで、光の帯のことをスペクトルと名付けたんだ」
「…………へえ」
気の抜けた相槌を打つ日和を、日向はジロリと横目で見た。
「さては右から左へスルーだな?」
「す、すみません。ただ綺麗だな、としか考えられなくて……」
「この現象は何だろう、とか思わないのか?」
「はい、全く」
ガクッと日向は肩を落とす。
「まあ、そうだろうな。こういう話をして、興味深く聞いてくれる女子に会ったことない」
「そんなことは……。私が疎いだけだと思います」
「いや、いい。慣れてるから。それより急ごう」
「はい」
二人で会社のエントランスを出ると、すぐ近くの駅から地下鉄に乗った。



