恋愛日和〜真逆の二人が惹かれ合うまで〜

「えーっと、これが先方に渡す資料な」

次の日。
日向はミーティングルームで日和と並んで座り、慎一から資料を受け取る。

新規のクライアント先に次回は三人で行くことになっており、その時に提出するマニュアルを確認していた。

「どこか分かりにくいところあるか?」

慎一に聞かれて、日向は資料に目を通す。
だが隣に座る日和が視界に入ると、どうにも昨夜のことが気になってしまった。

(なんだったんだ?あのおじさんは。随分親しげだったけど、まさか……?いやいや、さすがにそれはない)

首を振って考えを打ち消していると、日和が顔を上げた。

「飯田さん。このピクトグラムなんですけど……」

ん?ピクトグラム?と、日向は資料をめくる。

(どこにピクトグラムなんてあるんだ?)

不思議に思っていると、日和が資料を指差しながら慎一に尋ねた。

「こことここ、微妙に色が違うと思います」
「えっ、どこ?同じ色のはずだけど」
「こっちはライトブルーで、これはパウダーブルーかと」
「え?あっ!ほんとだ。カラーコードの番号が違ってる。よく気づいたねー、ひよちゃん。助かったよ。色の正確性の話をするのに、資料が間違えてたんじゃ台無しだ」

日向もその部分を確認する。

(確かに。こんな微妙な色の違い、言われるまで分からなかった。……って、いやいや!ピクトグラムちゃうし!)

日向は日和に向き直った。

「宇野、さっきこれのことピクトグラムって言った?」
「え?はい」
「それを言うならヒストグラムだ。ピクトグラムとは別物」
「ええ!?じゃあピクトグラムって?」
「ピクトグラムは、見た目に分かりやすい案内記号のこと」
「ああ!非常口の棒人間みたいなのですね」

そう言って日和は、例のノートにサラサラと図を描いた。

「おおー、ひよちゃん上手いね!確かにこのマーク、デパートでよく見かけるわ」

慎一が日和の絵に感心する。

「でも私、名前を覚え間違いしてました。正しくはヒスト……グラム、と」

図の横に文字を書き込む日和を見て、日向はまたしてもツッコミを入れた。

「違う!だから、これはピクトグラムだってば」
「あ、そっか!あはは!」

ガクッと日向は脱力する。

(もう何がなんだか、雑念が多すぎだ。おじさんといい、ピクトグラムにヒストグラム……)

いつもの冷静な思考回路が働かず、日向は頭を抱えた。