恋愛日和〜真逆の二人が惹かれ合うまで〜

「宇野?着いたぞ」

ハザードをつけてタクシーが止まると、日向は日和を揺すり起こした。

「ん……。え、あっ!すみません。私、眠ってしまって」
「いや、いい。それより住所ここで合ってる?」

日向は窓の外に見える木造2階建てのアパートを、怪訝そうに見上げる。

「はい、合ってます。佐野さん、送っていただいてありがとうございました」

そう言うと日和は、メーターを見て財布を取り出す。

「そんなのいいから」
「でも……」
「飲みに誘ったのはこっちなんだ。週末でもないのに、つき合わせて悪かった」
「いえ、とんでもない」

日向は一旦タクシーを降りると、続いて降りる日和に手を貸した。

「ありがとうございます」
「いや、それじゃあまた明日」
「はい、おやすみなさい」
「おやすみ」

そう言って別れようとした時、前方から酔っ払った中年男性がフラフラと近づいて来るのが見えた。
日向はとっさに日和の肩を抱いて、背を向ける。
男性が通り過ぎるのを待っていると、鼻歌を歌っていた男性が「ん?」と立ち止まった。

「あれ、ひよちゃん?」
「ゴンさん!こんばんは」

……は?と、日向は呆気に取られる。

「こーんな夜更けにデートか?おっ!こりゃまたイケメンな兄ちゃんだな。やるじゃねーの、ひよちゃん」
「ゴンさん、違うから。こちらは会社の先輩なの」
「へ?そうかそうか。いつもひよちゃんがお世話になってます」

急に丁寧に挨拶する男性につられて、日向も「こちらこそ」と頭を下げた。

「それでは佐野さん、ありがとうございました」
「え?ああ」

日和は日向にお辞儀をすると、男性と肩を並べて歩き出す。

「ゴンさん、今日も飲んで帰って来たの?」
「おうよ。ひよちゃんは?」
「ふふっ、私もなの」
「おー、珍しいな。じゃあ、二人で飲み直すか」

ちょちょちょ、ちょっと!と、日向は虚しく手を伸ばす。

「だめだよー、もう遅いもん。じゃあね、ゴンさん。ちゃんと電気消してから寝てね」
「あいよー。またな、ひよちゃん」

二人はそれぞれ隣同士の部屋の玄関を開ける。
パタンとドアが閉まり、パッと部屋の電気が点いても、日向はしばらく呆然とその場に立ち尽くしていた。