恋愛日和〜真逆の二人が惹かれ合うまで〜

しばらくして、日和はふと顔を上げて尋ねる。

「あの、佐野さん」
「ん、なに?」
「今日、帰社してから部長に報告はしましたけど、新規の案件ってこんなにどんどん進めて大丈夫なのでしょうか?私はてっきり、部長からの指示を待つのかと思っていたのですが……」
「ああ、それなら大丈夫。うちの会社って、上から下に指示を出すトップダウンじゃなく、下の俺達が考えてそれを上に報告するボトムアップが主流なんだ」

そうなのですね、と日和は頷く。

「だから宇野も、何か思いついたらどんどん教えてくれ。先輩も後輩も関係ないから」
「はい!」

笑顔で返事をすると、日和はまたノートにペンを走らせる。

「さっきから何書いてるんだ?って、なんだこれ」

日向が日和の手元を覗き込むと、そこにはメモのような走り書きがあった。


「は?太陽光のスペクタクル……って、違うだろ!スペクトルだ!しかもガリレオじゃない、ニュートン!」
「あれ、そうでしたっけ?」
「それになんだよ?ピンチインのにゅにゅって」
「分かりやすく書いておきました」
「ちっとも分からん!」

言い合っていると、椿が意味ありげにニヤリと日向を見た。

「なんだよ、椿」
「ん?噛み合ってないのに、なんかいい感じのコンビだなーって」
「どういう意味だよ?」
「だって二人は右脳派と左脳派で真逆でしょ?それなのに反対方向に歩いて行ったら、ぐるっと回って巡り会った、みたいな」

はあ?と日向は思い切り眉間にしわを寄せた。

「さっぱり意味が分からん」
「ねえねえ、二人とも。ちょっと手をパーにして見せて」
「なんでだよ?」
「いいから!」

椿は日向と日和の手を取って、じっくりと見比べる。

「やっぱり!人差し指と薬指の長さを比べると、日向は薬指の方が長くて、ひよちゃんは人差し指の方が長いわね」
「だからなんなんだ?」
「あのね、お母さんのお腹の中にいた時のホルモンの影響で、指の長さの比率が決まるんだって。薬指は男性ホルモン、人差し指は女性ホルモンの影響が大きいの。つまり日向は男性脳、ひよちゃんは女性脳ってことかな?」

すると慎一が、へえーと身を乗り出した。

「おっ、ほんとだ。俺はどうだろ?んー、なんか同じくらいだな。椿は?」
「私も同じくらいの長さなの」
「面白いな。やっぱり日向とひよちゃんは似てないってことか」
「でも似てなくても息が合ってる感じよね?ふふっ」
「そうだな。これからのコンビの活躍を期待しよう」

盛り上がる椿と慎一を前に、日向はどこかふてくされていた。