床にしっかり両手をついて、思いっきり両足を蹴り上げた。
一瞬体が浮くような感覚があって、それから私の両足は壁にしっかりとくっついていた。

「よし、オッケー!」
昇の声に逆立ちをやめて動画を確認する。
自分が逆立ちしている姿なんて初めてみたから、なんだか恥ずかしい。

しかもクラスメートたちみんな見てたし……。
照れながら自分の席に戻っている間に知里はさっさと撮影を終わらせてしまっていた。

運動神経がいいと自分で言うだけあって、両足がピンと伸びてとてもキレイな逆立ちだ。
「どうしよう。ここでミス1?」
美穂が今にも泣き出してしまいそうな顔を向けてくる。

最初からミスするのは嫌だったのだろう。
逆立ちできないと言いながらも、ちゃんとジャージを着込んでいる。

「大丈夫だよ。通知では補助なしで逆立ちしろとは書かれていなかったから。ほら、行くよ」

教室後方へ向かうと、私と知里が美穂を挟むようにして立った。
ふたりで補助をすればできるはずだ。
「よし、撮影準備はできたぞ」

昇がしっかりとスマホを向けている。
「頑張れ美穂ちゃん!」