電話にでると面倒なことになるとわかっているから、誰も受話器を取りたがらない。
少しも動こうとしない私とお父さんを見てお母さんが仕方なく電話に手を伸ばした。
「はい、もしもし?」
よそ行きの声色で対応するお母さん。
だけどその声色がすぐに低く険しものに変化して、私とお父さんは目を見交わせた。
お母さんが電話口でこんな声になるときは、地区で訃報の連絡があったときとか、なにか悪い知らせがあったときだけだ。
今回もなにか悪いことがあったんだろうか。
緊張しながら電話が終わるのを待つ。
約一分ほどで電話を切ったお母さんがゆっくりとふりむいて私を見た。
その表情はすごく険しくて『なんの電話?』と、質問することもためらわれた。
私の代わりにお父さんが「なんの電話だったんだ?」と質問してくれたことで、ようやく呼吸ができた。
「美術の菅原先生が……」
お母さんはそこまで言って口を閉じた。
どう言おうか考えているみたいで、私から視線を外す。
「菅原先生がどうしたの?」
私はソファから立ち上がってお母さんに近づいた。
授業内容の変更ならいちいち家の固定電話にかけてくる必要はない。
学校専用のメッセージグループがあるから、先生たちはみんなそこに書き込んでいる。
こうして電話してくるということは、ただ事じゃないはずだ。
少しも動こうとしない私とお父さんを見てお母さんが仕方なく電話に手を伸ばした。
「はい、もしもし?」
よそ行きの声色で対応するお母さん。
だけどその声色がすぐに低く険しものに変化して、私とお父さんは目を見交わせた。
お母さんが電話口でこんな声になるときは、地区で訃報の連絡があったときとか、なにか悪い知らせがあったときだけだ。
今回もなにか悪いことがあったんだろうか。
緊張しながら電話が終わるのを待つ。
約一分ほどで電話を切ったお母さんがゆっくりとふりむいて私を見た。
その表情はすごく険しくて『なんの電話?』と、質問することもためらわれた。
私の代わりにお父さんが「なんの電話だったんだ?」と質問してくれたことで、ようやく呼吸ができた。
「美術の菅原先生が……」
お母さんはそこまで言って口を閉じた。
どう言おうか考えているみたいで、私から視線を外す。
「菅原先生がどうしたの?」
私はソファから立ち上がってお母さんに近づいた。
授業内容の変更ならいちいち家の固定電話にかけてくる必要はない。
学校専用のメッセージグループがあるから、先生たちはみんなそこに書き込んでいる。
こうして電話してくるということは、ただ事じゃないはずだ。



