髪の毛が風にゆれてサララサとなびく様子が美少年という言葉を引き立たせている。
「あぁ、はい」

昇が曖昧な返事をしながら池の横に設置されているカラーボックスに近づく。
そこに数種類の鯉の餌が準備されているのだ。

あまりやりすぎるのはよくないということで、少量の餌が透明カップに入れられている。

餌をやれるのは1日1人ひとカップまでという決まりだ。
私達はそれぞれカップを手に持ち、池へと近づいていく。
4匹いる鯉たちが人影に気がついて近づいてくる。

人間が餌をくれるとわかっているから、すごく人懐っこい。
その間に先輩はスマホを取り出してなにかを確認しはじめたようだ。

何気なしに視線を向けると、その画面が見えてしまった。
【クリア】と書かれた文字には見覚えがあり、「それって」と、つい口に出してしまった。

先輩の整った顔が驚いた表情になり「なに？」と質問してくる。
「あ、あの、それってもしかして【R-リアル】ですか？」

そもそもこんな時間に池に来ること自体が珍しい。
先輩も同じゲームに参加していても不思議じゃない。