「あなたたちみたいな質問をしてきた人は始めてよ。そうね、娘は怯えてた」

さっきまでの警戒心は嘘みたいに穏やかな口調になる。
「怯えていたって、スマホにですか？」

「そんなわけないでしょ。友達によ」
洋太さんの質問にため息まじりの返事をする。

「いえ、あの子たちは友達なんかじゃない。花子にとっては悪魔みたいな相手だったに違いないもの」

女性が両手の拳を握りしめるのが見えた。
怒りで微かに体が震えている。
「悪魔っていうのは、つまり？」

抽象的な言葉から現実感のある言葉へと、洋太さんが誘おうとしている。
「イジメよ。同じクラスにいた３人組が、娘をイジメていたの」
「それが原因で歩きスマホをしてしまったということですか？」

「そうよ。流行っている【R‐リアル】っていうアプリを無理やりダウンロードさせられて、アプリからの通知には必ず反応するように言われていたのよ」