「はい。今日は友だちと一緒だったので、もう1度先生の顔を見たくて……」
「そう。そういうの嬉しいわ。何度でも見に来てやってね」

先生のお母さんの目尻に光るものが見えて、もらい泣きしてしまいそうになる。

そんな自分を叱咤して「菅原先生は生前なにか変わったこととかなかったですか?」と、質問した。

このままずるずると菅原先生の思い出話に浸っていたいと思うけれど、そんな暇はない。
なにかヒントがあるなら、すぐに見つけ出したかった。

「変わったこと? さぁ、特になかったようだけど……でもちょっと落ち着かない様子はあったかもしれないわねぇ」

右手を頬に添えて、空中へ視線を投げて呟く。
私達のために思い出そうとしてくれているのがわかった。
「なにか調べ物でもしているの?」

そう質問されて私は昇へ視線を向けた。
ここで【R‐リアル】のことを言うわけにはいかない。
菅原先生はこのアプリについて誰にも言わずにひとりで苦しんでいたんだから。

「菅原先生の次に生徒も亡くなったのをご存知ですか?」
昇からの質問に先生のお母さんは悲痛な表情で頷いた。

「えぇ、聞いているわ。急に倒れたって」