菅原先生の家までバスに乗って20分ほどの距離を移動すると、そこは市街地から離れて田畑が多い景色になってくる。

一軒の家の大きさも大きくなり、広い庭や屋敷のような家々が建ち並ぶ。
「こんな立派な家だったんだね。なんか緊張してきちゃった」

大きなお屋敷のような家の前で立ち止まり、知里が呟く。
自分の暮らしている家の倍くらいの大きさはありそうな家に、広い庭。

庭の奥には自家栽培しているのか畑も見えている。
「せっかくここまで来たんだ。行くしかないだろ」

躊躇している知里を押しのけるようにして昇が前に出た。
そして玄関チャイムを鳴らす。
中からチャイム音が聞こえてきて、すぐにスリッパを鳴らす足音が近づいてきた。

「はい」

女性の声が聞こえてきて引き戸が開くと、そこには70台前半くらいの女性が立っていた白髪まじりの短髪は跳ねないようにキレイに撫でつけられていて、白い割烹着を着ている。

家事としている途中に押しかけてしまっただろうかと、申し訳ない気持ちになる。