無視
会社からの帰り道、車を運転していると急な眠気に襲われた。
最近残業続きで日付を跨いで帰宅する日が増えていたのが原因だと思う。
「うぅ~、本当に眠い」
頭を振ってどうにか眠気を覚まそうとするけれどうまく行かない。
確かダッシュボードに眠気醒ましのタブレットがあったはずだと、手をのばす。
「なんだ、空になってたんだ」
辛いタブレットを一度に何粒も口に放り込むため、すでに中は空っぽだ。
仕方ない。
このまま運転するしかなさそうだ。
こんな遅い時間では周りに人影はなく、両親と暮らしている家まであと2キロもない。
だから油断してしまった。
ついまぶたが 閉じかけた瞬間私は強い衝撃を感じてあちこち体を打ち付けられていた。
やっちゃった。
そう思って薄めを開けるも、体は思うように動かない。
フロントガラス越しに外を見ると赤い車が横転しているのが見えた。
私はあの車にぶつかってしまったんだろうか。
運転手は大丈夫だろうか。
そんなことを考えている間に意識が途絶えた。
私が交通事故を起こしてから数日が経過していた。
その間に相手の運転手は打ち所が悪くてその日の内に亡くなってしまったということを知った。
死亡事故……。
自分のやってしまったことに全身が氷ついた。
私は人を殺してしまった。
しかも居眠り運転で。
到底許されることじゃない。
罪悪感と恐怖心で外へ出ることもできず、ずっと自分の部屋の中に引きこもっていた。
だけど相手の葬儀には参列しようと思ったときには、私はもう葬儀会場にいた。
どうやってここまっできたのか、どうやって着替えをしたのかイマイチ覚えていないけれど、きっと家族の誰かが連れてきてくれたんだろう。
私は打ちひしがれ、泣いている遺族を前にしてなにも言えなかった。
相手は私をチラリとも見ようとしなかったので、誰ともなにも会話せずに帰宅することになってしまった。
そういえば、と、ひとりで帰宅する途中で考えた。
私は重罪を犯してそまったのに、何もお咎めがないのだろうか?
もう病院からは退院しているし、なにかあってもおかしくはない。
そのときのことを考えると、これ以上家族に迷惑はかけられないと感じた。
警察官たちはきっと私の家に話を聞きに来るだろう。
そうすれば近所の噂のタネにされてしまうかもしれない。
私は勇気を出して自分から警察署へと向かった。
免許更新のときくらいしかここへ来たことはないので、妙に緊張する。
そのまま受付に向かい「あの」と、声をかける。
しかし受付に座っている制服姿の女性は反応しない。
「あの、すみません」
「はい、なんでしょう?」
反応したのは私よりもあとに来た男性に対してだった。
順番なんですけど。
と言いかけて言葉を飲み込んだ。
さっきまで捕まる覚悟があったのに、なんだか出鼻をくじかれたようになってしまい、気持ちがどんどん沈んでいく。
私は仕方なく、そのまま家に帰ることにした。
ふと気がつくと私は自分の部屋にいた。
いつの間に着替えたのか、部屋着姿になっている。
まただ、と思う。
葬儀場へ行ったときも行き帰りの記憶がスッポリと抜け落ちていた。
不思議に感じながら部屋を出てリビングへ向かうと、両親がテレビを見ている。
けれどふたりともなんだかふさぎ込んでいるように見えるのは、きっと気の所為じゃない。
きっと、ひとり娘の私が死亡事故を起こしたせいだ。
「ねぇ、ふたりとも、本当にごめんね」
申し訳なくてモゴモゴと口にする。
けれど聞こえていなかったのかふたりから反応はない。
「すごく迷惑かけちゃったよね。私自分で警察に行こうと思うの。いいよね?」
母親がため息を吐き出して立ち上がった。
返事をせずに、隣の和室へと移動していく。
「お母さんお願い、話を聞いて」
後について和室に入る。
そして仏壇を見て絶句した。
会社からの帰り道、車を運転していると急な眠気に襲われた。
最近残業続きで日付を跨いで帰宅する日が増えていたのが原因だと思う。
「うぅ~、本当に眠い」
頭を振ってどうにか眠気を覚まそうとするけれどうまく行かない。
確かダッシュボードに眠気醒ましのタブレットがあったはずだと、手をのばす。
「なんだ、空になってたんだ」
辛いタブレットを一度に何粒も口に放り込むため、すでに中は空っぽだ。
仕方ない。
このまま運転するしかなさそうだ。
こんな遅い時間では周りに人影はなく、両親と暮らしている家まであと2キロもない。
だから油断してしまった。
ついまぶたが 閉じかけた瞬間私は強い衝撃を感じてあちこち体を打ち付けられていた。
やっちゃった。
そう思って薄めを開けるも、体は思うように動かない。
フロントガラス越しに外を見ると赤い車が横転しているのが見えた。
私はあの車にぶつかってしまったんだろうか。
運転手は大丈夫だろうか。
そんなことを考えている間に意識が途絶えた。
私が交通事故を起こしてから数日が経過していた。
その間に相手の運転手は打ち所が悪くてその日の内に亡くなってしまったということを知った。
死亡事故……。
自分のやってしまったことに全身が氷ついた。
私は人を殺してしまった。
しかも居眠り運転で。
到底許されることじゃない。
罪悪感と恐怖心で外へ出ることもできず、ずっと自分の部屋の中に引きこもっていた。
だけど相手の葬儀には参列しようと思ったときには、私はもう葬儀会場にいた。
どうやってここまっできたのか、どうやって着替えをしたのかイマイチ覚えていないけれど、きっと家族の誰かが連れてきてくれたんだろう。
私は打ちひしがれ、泣いている遺族を前にしてなにも言えなかった。
相手は私をチラリとも見ようとしなかったので、誰ともなにも会話せずに帰宅することになってしまった。
そういえば、と、ひとりで帰宅する途中で考えた。
私は重罪を犯してそまったのに、何もお咎めがないのだろうか?
もう病院からは退院しているし、なにかあってもおかしくはない。
そのときのことを考えると、これ以上家族に迷惑はかけられないと感じた。
警察官たちはきっと私の家に話を聞きに来るだろう。
そうすれば近所の噂のタネにされてしまうかもしれない。
私は勇気を出して自分から警察署へと向かった。
免許更新のときくらいしかここへ来たことはないので、妙に緊張する。
そのまま受付に向かい「あの」と、声をかける。
しかし受付に座っている制服姿の女性は反応しない。
「あの、すみません」
「はい、なんでしょう?」
反応したのは私よりもあとに来た男性に対してだった。
順番なんですけど。
と言いかけて言葉を飲み込んだ。
さっきまで捕まる覚悟があったのに、なんだか出鼻をくじかれたようになってしまい、気持ちがどんどん沈んでいく。
私は仕方なく、そのまま家に帰ることにした。
ふと気がつくと私は自分の部屋にいた。
いつの間に着替えたのか、部屋着姿になっている。
まただ、と思う。
葬儀場へ行ったときも行き帰りの記憶がスッポリと抜け落ちていた。
不思議に感じながら部屋を出てリビングへ向かうと、両親がテレビを見ている。
けれどふたりともなんだかふさぎ込んでいるように見えるのは、きっと気の所為じゃない。
きっと、ひとり娘の私が死亡事故を起こしたせいだ。
「ねぇ、ふたりとも、本当にごめんね」
申し訳なくてモゴモゴと口にする。
けれど聞こえていなかったのかふたりから反応はない。
「すごく迷惑かけちゃったよね。私自分で警察に行こうと思うの。いいよね?」
母親がため息を吐き出して立ち上がった。
返事をせずに、隣の和室へと移動していく。
「お母さんお願い、話を聞いて」
後について和室に入る。
そして仏壇を見て絶句した。



