意味がわかると怖い話【解説付き】

大喧嘩

今年の相次ぐ大寒波によって大雪となっていた。
普段あまり雪が降らないこの地域でも、外がうっすらと白くなっている。
「もう、何度も電話かけたんだよ?」

「だかわ、悪かったって言ってるだろう?」
外とは違い暖かな室内にレイコとトモの言い争う声が聞こえてくる。

ふたりは同じ会社に務める同僚で、付き合いはじめて半年になる。
レイコはトモの真面目に働く姿を見て好きになったのだけれど、今日はそれが仇となった。

今日はレイコの誕生日だというのに、何度電話してもトモは出なかったのだ。
お得意様への挨拶回りに行くと外へ出たトモと一緒に帰るため、ずっと会社に残っていた。

仕事終わりにトモと一緒にイラリアンにいく予定にしていたからだ。

普段よりもちょっとオシャレな私服で出勤してきた朝は、同僚の女性社員たちからからかわれて、それでも嫌な気にはならなかった。

レイコは一番真っ先に寿退社するんじゃないか。
なんて噂されるくらい仲がよかったからだ。
それなのに、とレイコはため息を吐き出す。

外回りの仕事に熱中していたトモはついうっかり約束時間を忘れてしまったのだ。
トモと連絡が取れたのはイタリアンの予約時間を1時間も過ぎた頃だった。

今更行ってもお店に迷惑をかけるだけだし、予約時間を20分過ぎたときにレイコからお詫びの電話も入れていた。

これで今日のディナーはなくなってしまった。
トモはそれからすぐに会社に戻ってきたけれど、レイコの気分は最低のままだった。

トモは懸命に謝り、レイコの誕生日を成功させるべくレイコの部屋までやってきた。
だけどそこでまた自分やらかしてしまったことに気がついた。
レイコへの誕生日プレゼントを自分の家に置いてきてしまったのだ。

昨日の夜はちゃんと覚えていたのに、朝になると仕事のことで頭がいっぱいになってしまう。
それがトモの癖だった。

当然レイコの機嫌は今でも悪いまま。
ということだった。
「本当にごめん! 今度の休みにイタリアンに行こう。そのときにプレゼントも持ってくるから」

平身低頭に謝るトモの姿を見てレイコはまたため息を吐き出した。
自分の誕生日にいつまでも喧嘩を続けているわけにはいかない。

せっかくなんだから少しは楽しまないと。
トモの失敗は今後繰り返さなければいいということで済ませることにした。

「ありがとうレイコ。それと、誕生日おめでとう」
ソファに隣り合って座って抱き寄せられると心の中が暖かくなる。
外にはまたチラチラと雪が降り始めていた。

トモが帰宅して部屋にひとりになるとレイコは残ったワインを飲み始めた。
心も体も今はポカポカしていてとても心地良い。

このままソファに横になって眠ってしまいたいと思った、そのときだった。
「くしゅんっ」
冷気が体にまとわりついてきて、くしゃみが出た。