マフラー
学校の横にある空き地ではよく野良猫が住み着いているのを知っていた。
「ほら、給食の残りのパンだぞ」
小学校3年生の琢磨はランドセルから半分残したコッペパンを取り出して空き地にある茂みに声をかけた。
すると匂いに釣られて一匹の黒猫が姿を見せた。
黒猫はいつも茂みに身を隠しているから、今日も体中に葉っぱや土がついている。
「取らないから、ゆっくり食えよ」
琢磨がパンをちぎって手のひらに乗せて差し出すと、黒猫はすぐに食べに来た。
もう何度もこうやって餌をやりにきているから黒猫はすっかり琢磨になついているのだ。
琢磨は黒猫がパンを食べている間に、その体についた葉っぱや土を取ってやった。
背中を軽くなでるとまだまだ痩せていることがわかる。
琢磨が餌をやり始める前までは、なにを食べて生きてきたのはわからなかった。
黒猫はパンをすべて食べ終えると健一の膝に乗ってきてそのまま丸まった。
「ふふっ。可愛いなぁ」
健一の家は古い借家でペット禁止なのでこういうところでしか動物と触れ合う機会がなかった。
友達の中には休日になると毎週のように動物園や水族館に連れて行ってもらう子もいるけれど、健一の家にそんな余裕はなく、健一もなんとなくそのことに気がついていた。
そんなある日のことだった。
「見てこれ、素敵でしょう?」
だんだん寒さが激しくなってきた1月半ば。
クラスメートの女子がピンク色のマフラーを首に巻いて登校してきた。
それはキラキラと光り輝くほど美しく、健一は触れてみたいと思った。
「健一くんも、触ってみる?」
海外赴任中の父親がお正月に帰宅して、そのときお土産でもらったのだというそれはすべすべでふわふわした手触りをしていて、すぐに夢中になってしまった。
まるであの黒猫に触れているみたいだ。
ちょうど冬毛の今の季節は毛がモコモコで本当に気持ちがいいから。
両手でマフラーに触れて「うわぁ、気持ちいい!」と歓声を上げる。
「でしょう? すっごく高かったんだって、私のパパ言ってたもん」
クラスメートは自信満々で答える。
一体どれくらいの値段なんだろう?
健一はぽーっとした顔でピンク色のマフラーを見つめたのだった。
「ねぇお父さんお母さん、僕もマフラーほしいな」
その日の夜。
すっかり日が暮れてお店もすべて閉店する時間。
さっそく健一は両親にその話を聞かせた。
「でね、すっごく手触りがよくて気持ち良かったんだ!」
「そっか、健一がものを欲しがるなんて珍しいから、よほど気持ちよかったんだな」
「うん!」
お父さんからの問いかけに健一は大きく頷いた。
あの子と同じものが手に入るとは思っていない。
だけどマフラーを持っていないのは自分だけだから、ちょっと寂しかったのだ。
ずっと安いものでいい。
首元が暖かくなるものがあれば、放課後黒猫に会いに行ったときも寒くなくなる。
そう考えてのことだった。
そして翌日。
目をさますと枕元に黒いマフラーが置いてあったのだ。
クリスマスの日にもこうして枕元にプレゼントを置いてもらったことなんてない健一は喜んで両手で抱きしめた。
それはすべすべしていてふわふわな手触りで、クラスメートのマフラーとそっくりだった。
「お父さんお母さんありがとう!!」
朝起きだした両親に抱きついた。
学校の横にある空き地ではよく野良猫が住み着いているのを知っていた。
「ほら、給食の残りのパンだぞ」
小学校3年生の琢磨はランドセルから半分残したコッペパンを取り出して空き地にある茂みに声をかけた。
すると匂いに釣られて一匹の黒猫が姿を見せた。
黒猫はいつも茂みに身を隠しているから、今日も体中に葉っぱや土がついている。
「取らないから、ゆっくり食えよ」
琢磨がパンをちぎって手のひらに乗せて差し出すと、黒猫はすぐに食べに来た。
もう何度もこうやって餌をやりにきているから黒猫はすっかり琢磨になついているのだ。
琢磨は黒猫がパンを食べている間に、その体についた葉っぱや土を取ってやった。
背中を軽くなでるとまだまだ痩せていることがわかる。
琢磨が餌をやり始める前までは、なにを食べて生きてきたのはわからなかった。
黒猫はパンをすべて食べ終えると健一の膝に乗ってきてそのまま丸まった。
「ふふっ。可愛いなぁ」
健一の家は古い借家でペット禁止なのでこういうところでしか動物と触れ合う機会がなかった。
友達の中には休日になると毎週のように動物園や水族館に連れて行ってもらう子もいるけれど、健一の家にそんな余裕はなく、健一もなんとなくそのことに気がついていた。
そんなある日のことだった。
「見てこれ、素敵でしょう?」
だんだん寒さが激しくなってきた1月半ば。
クラスメートの女子がピンク色のマフラーを首に巻いて登校してきた。
それはキラキラと光り輝くほど美しく、健一は触れてみたいと思った。
「健一くんも、触ってみる?」
海外赴任中の父親がお正月に帰宅して、そのときお土産でもらったのだというそれはすべすべでふわふわした手触りをしていて、すぐに夢中になってしまった。
まるであの黒猫に触れているみたいだ。
ちょうど冬毛の今の季節は毛がモコモコで本当に気持ちがいいから。
両手でマフラーに触れて「うわぁ、気持ちいい!」と歓声を上げる。
「でしょう? すっごく高かったんだって、私のパパ言ってたもん」
クラスメートは自信満々で答える。
一体どれくらいの値段なんだろう?
健一はぽーっとした顔でピンク色のマフラーを見つめたのだった。
「ねぇお父さんお母さん、僕もマフラーほしいな」
その日の夜。
すっかり日が暮れてお店もすべて閉店する時間。
さっそく健一は両親にその話を聞かせた。
「でね、すっごく手触りがよくて気持ち良かったんだ!」
「そっか、健一がものを欲しがるなんて珍しいから、よほど気持ちよかったんだな」
「うん!」
お父さんからの問いかけに健一は大きく頷いた。
あの子と同じものが手に入るとは思っていない。
だけどマフラーを持っていないのは自分だけだから、ちょっと寂しかったのだ。
ずっと安いものでいい。
首元が暖かくなるものがあれば、放課後黒猫に会いに行ったときも寒くなくなる。
そう考えてのことだった。
そして翌日。
目をさますと枕元に黒いマフラーが置いてあったのだ。
クリスマスの日にもこうして枕元にプレゼントを置いてもらったことなんてない健一は喜んで両手で抱きしめた。
それはすべすべしていてふわふわな手触りで、クラスメートのマフラーとそっくりだった。
「お父さんお母さんありがとう!!」
朝起きだした両親に抱きついた。



