未来鏡
今日の昼休みのことだった。
「ミライちゃん知ってる? この学校の大鏡の噂!」
友達のリンちゃんが目を輝かせてそう声をかけてきたので、私は首をかしげて「なんのこと?」と、聞き返した。
「この学校、階段の踊り場に大きな鏡があるでしょう?」
「うん。それがどうかしたの?」
階段の踊り場にある鏡なんて珍しくない。
生徒たちが自分の身だしなみをチェックするためにつけられている学校は多いから。
「放課後にひとりで大鏡の前に立つと、未来の自分の姿が見えるんだって!」
「えぇ? そんなの嘘でしょ」
だって、今まで私は何度もその大鏡の前を通っている。
放課後ひとりで通ったことだってあったと思うけれど、別に普通だった。
「大鏡は西側の階段と東側の階段両方に一枚ずつつけられているでしょう? その、西側の階段なんだって」
「あぁ、そうなんだ」
それなら通った回数は少ないかもしれない。
私達の教室は東階段に近い位置にあるから、わざわざ遠くの階段を使うことはない。
それでも納得いかなかった。
西側の階段だって、東側の階段を同じくらい生徒が行き来しているはずだ。
それでも未来が見えるなんて噂は今まで聞いたことがなかった。
「話はまだ途中だよ? 放課後西階段の大鏡の前で立ち止まって、まっすぐ鏡の方を向くの。それから『鏡様鏡様、未来の姿を見せてください』って唱えるんだって!」
「ふぅん……」
そこまで聞いても胡散臭さは抜けきらなくて、思わずあくびをしてしまった。
そんな私を見てリンちゃんは最初の勢いをなくしてしまった。
残念そうにこちらを見ている。
「ごめんごめん。でも、面白いと思うよ」
そして今、私は大鏡の前に立っている。
時刻は放課後。
生徒たちはみんな帰ってしまって残っているのは先生と部活動や委員会のある子だけだ。
「西階段の大鏡か。こうして見るとたしかにちょっと不気味だけど」
鏡の中の自分をジッと見つめても別に変わった様子はない。
私が右手を上げると相手は左手を上げる。
反転した私が同じ動作を繰り返すだけだった。
「えっと、鏡の正面に立って、唱えるんだっけ? 鏡様鏡様、未来の姿を見せてください」
言ってから笑いそうになってしまった。
こんな子供だまし、下級生の子しか信じないよ。
思っていた通り鏡の中私に変化はない。
紺色のスカートに紺色のブレザーをきて白い靴下を履いている。
靴下の先端が黒く汚れているから、今日帰ったらちゃんと洗濯しなきゃ。
そう思いながら階段を下る。
あ~あ、変なことに時間つかっちゃったな、早く帰ろっと。
キュッキュッと音を立てながら昇降口へ向かい、靴に履き替えるために上履きを脱いだら、先の黒くなったソックスが見えた。
その瞬間気がついて、私は棒立ちになって立ち尽くしたのだった。
今日の昼休みのことだった。
「ミライちゃん知ってる? この学校の大鏡の噂!」
友達のリンちゃんが目を輝かせてそう声をかけてきたので、私は首をかしげて「なんのこと?」と、聞き返した。
「この学校、階段の踊り場に大きな鏡があるでしょう?」
「うん。それがどうかしたの?」
階段の踊り場にある鏡なんて珍しくない。
生徒たちが自分の身だしなみをチェックするためにつけられている学校は多いから。
「放課後にひとりで大鏡の前に立つと、未来の自分の姿が見えるんだって!」
「えぇ? そんなの嘘でしょ」
だって、今まで私は何度もその大鏡の前を通っている。
放課後ひとりで通ったことだってあったと思うけれど、別に普通だった。
「大鏡は西側の階段と東側の階段両方に一枚ずつつけられているでしょう? その、西側の階段なんだって」
「あぁ、そうなんだ」
それなら通った回数は少ないかもしれない。
私達の教室は東階段に近い位置にあるから、わざわざ遠くの階段を使うことはない。
それでも納得いかなかった。
西側の階段だって、東側の階段を同じくらい生徒が行き来しているはずだ。
それでも未来が見えるなんて噂は今まで聞いたことがなかった。
「話はまだ途中だよ? 放課後西階段の大鏡の前で立ち止まって、まっすぐ鏡の方を向くの。それから『鏡様鏡様、未来の姿を見せてください』って唱えるんだって!」
「ふぅん……」
そこまで聞いても胡散臭さは抜けきらなくて、思わずあくびをしてしまった。
そんな私を見てリンちゃんは最初の勢いをなくしてしまった。
残念そうにこちらを見ている。
「ごめんごめん。でも、面白いと思うよ」
そして今、私は大鏡の前に立っている。
時刻は放課後。
生徒たちはみんな帰ってしまって残っているのは先生と部活動や委員会のある子だけだ。
「西階段の大鏡か。こうして見るとたしかにちょっと不気味だけど」
鏡の中の自分をジッと見つめても別に変わった様子はない。
私が右手を上げると相手は左手を上げる。
反転した私が同じ動作を繰り返すだけだった。
「えっと、鏡の正面に立って、唱えるんだっけ? 鏡様鏡様、未来の姿を見せてください」
言ってから笑いそうになってしまった。
こんな子供だまし、下級生の子しか信じないよ。
思っていた通り鏡の中私に変化はない。
紺色のスカートに紺色のブレザーをきて白い靴下を履いている。
靴下の先端が黒く汚れているから、今日帰ったらちゃんと洗濯しなきゃ。
そう思いながら階段を下る。
あ~あ、変なことに時間つかっちゃったな、早く帰ろっと。
キュッキュッと音を立てながら昇降口へ向かい、靴に履き替えるために上履きを脱いだら、先の黒くなったソックスが見えた。
その瞬間気がついて、私は棒立ちになって立ち尽くしたのだった。



