意味がわかると怖い話【解説付き】

たまご

家族でハイキングへ行った美咲は小道から逸れて木漏れ日の下で休息を取っていた。
お父さんとお母さんの声が少し遠くの方から聞こえてくる。

ここらへんは観光スポットとして有名だったけれど、今日は平日だから人はまばらで美しい景色を好きなだけ堪能することができた。

ソレもこれも、美咲が通っている小学校が創立記念日で平日に関わらず午前中授業で帰宅することができたからだった。

かねてからここに来たいと話していた両親も休みを合わせて、無事に実現することができた。
「わぁ、鳥の卵!」

美咲が休憩していた足元に虹色のキレイな卵があることに気がついてしゃがみこんだ。
上を見ると木の枝に鳥の巣が作られている。

あそこから落ちてしまったのかもしれない。
手のひらに乗せてみるとどこにもひび割れがなく、温かい。

「まだ生きてるんだ」
このままじゃ可愛そうだけれど巣が作られている枝は高い場所にあり、手を伸ばしただけでは届かない。

「そうだ! 私が育ててあげるね」
美咲はそう言うと虹色の卵を大切にカバンの中に入れたのだった。

卵を持って両親と合流したとき、お母さんはしかめっ面をしていた。
「どうしたの?」
「お父さんってばこんなところまできて怖い話をするのよ」

「ははっ。この森には不思議な鳥がいてね。それは化け物を生むって話だったんだけど、そんなに怖かったかい?」

お父さんが申し訳なさそうな顔つきになって、お母さんの顔を覗き込んだ。
お母さんは怖い話が大の苦手だから、不機嫌になってしまったみたいだ。

「その鳥ってどんな鳥?」
「ごく普通の鳥だよ。黒くて目が金色なんだ」
「普通の鳥がどうして化け物を生むの?」

「わからない。でも数十万個にひとつの可能性で化け物が卵から還るって噂なんだよ」

「やめてよ、バカバカしい」
お母さんが怒ってそっぽを向いてしまった。
その卵って虹色をしている?

その質問を飲み込むと、美咲はふたりの後を追いかけるようにして森から出たのだった。

夜は近くのコテージに一泊することになっていた。
運良く明日は土曜日で、会社も学校も休みなのだ。

それなら明日来ても良かったと思うのだけれど、人が多いからどうしても平日が良かったらしい。

お父さんは久しぶりの三連休だと喜んでいた。
「こっちです」
コテージの管理人さんに案内される中、美咲はカバンから卵をそっと取り出した。

両手に包み込むように持つとぬくもりが伝わってくる。
もしこの子が化け物だったら?

そう考えると怖くなってすぐにカバンにしまった。
なにげなく振り向いた管理人が、その様子をジッと見ていたのだった。

夜になっても寝付けなくて、美咲はカバンの中から卵を取り出した。
窓から差し込む月明かりで卵が輝いて見える。

と、そのときだった。
黒くて金色の目を持つ鳥が窓へ向けて突進してきたのだ。

それは窓にぶつかる寸前のところで上へと飛行進路を変えた。
「あれって、お父さんの言ってた鳥なんじゃ……」
だとしたら、この子と取り返しにきたんだ。

一度上昇した鳥が再び下降して窓の前を取りすぎる。
まるで威嚇してきているようだ。
美咲は怖くなり、卵を自分のハンカチにくるんで慌てて外へ飛び出した。

と、そのときだった。
誰かが美咲の体を羽交い締めにしたのだ。

化け物だ!!
恐怖で声が出ない。

恐る恐る振り向くと、そこに立っていたのはコテージの管理人さんだった。
なぁんだと安心しかけたとき「その卵をよこせ」ギラついた目で管理人さんはそう言った。