背景にご用心
樹と文子が遠距離恋愛を初めて1年が経過していた。
最初の頃は電話でのやり取りが多かったけれど、ふたりともパソコンを持っているので最近ではリモートで連絡を取り合うことが増えていた。
大きな画面で相手の顔を見ることができるからと、文子はとても喜んだ。
今日文子が暮らしている街はあいにくの雨だけれど、樹がいる街は天気がよくて星が輝いているはずだ。
樹が面倒じゃなければ、画面越しに満天の星空を見せてもらってもいいかもしれない。
「樹、今週もお疲れ!」
自分で用意したビールを画面に向けて掲げてみせて乾杯する。
金曜日の夜は一週間仕事を頑張ったご褒美に少しながらめのリモートデートをすることに決まっていた。
「文子もお疲れ。仕事順調か?」
「まぁまぁかな。相変わらず先輩が怖いけどね。樹はどう?」
「俺もまだまだ忙しいよ。だからしばらく帰れそうにないんだ」
その言葉に文子の心は沈んでいく。
先月もそう言って会うことは叶わなかったから、今月こそは会ってデートできると楽しみにしていたのだ。
でも、お互いに社会人1年目で忙しいことはわかっている。
まだまだ覚えることも多くて文子だって大変な時期だった。
「そっか。仕方ないよね」
その代わりこれくらいのわがままなら許されるだろうと、文子は切り出した。
「樹の部屋から見える景色を見たいんだけど、ダメ?」
「景色? 真っ暗だぞ?」
「いいのいいの。樹がどんな空を見てるのか、見てみたいし」
満点の星空を期待して言った。
樹がノートパソコン片手に部屋の中を移動するのがわかった。
そして窓辺まで来た時、文子は「え」と声を漏らした。
「今日は生憎の雨なんだ。なにも見えなくてごめんな」
樹が写してくれた夜景は、文子もよく知っている夜景だった。
樹と文子が遠距離恋愛を初めて1年が経過していた。
最初の頃は電話でのやり取りが多かったけれど、ふたりともパソコンを持っているので最近ではリモートで連絡を取り合うことが増えていた。
大きな画面で相手の顔を見ることができるからと、文子はとても喜んだ。
今日文子が暮らしている街はあいにくの雨だけれど、樹がいる街は天気がよくて星が輝いているはずだ。
樹が面倒じゃなければ、画面越しに満天の星空を見せてもらってもいいかもしれない。
「樹、今週もお疲れ!」
自分で用意したビールを画面に向けて掲げてみせて乾杯する。
金曜日の夜は一週間仕事を頑張ったご褒美に少しながらめのリモートデートをすることに決まっていた。
「文子もお疲れ。仕事順調か?」
「まぁまぁかな。相変わらず先輩が怖いけどね。樹はどう?」
「俺もまだまだ忙しいよ。だからしばらく帰れそうにないんだ」
その言葉に文子の心は沈んでいく。
先月もそう言って会うことは叶わなかったから、今月こそは会ってデートできると楽しみにしていたのだ。
でも、お互いに社会人1年目で忙しいことはわかっている。
まだまだ覚えることも多くて文子だって大変な時期だった。
「そっか。仕方ないよね」
その代わりこれくらいのわがままなら許されるだろうと、文子は切り出した。
「樹の部屋から見える景色を見たいんだけど、ダメ?」
「景色? 真っ暗だぞ?」
「いいのいいの。樹がどんな空を見てるのか、見てみたいし」
満点の星空を期待して言った。
樹がノートパソコン片手に部屋の中を移動するのがわかった。
そして窓辺まで来た時、文子は「え」と声を漏らした。
「今日は生憎の雨なんだ。なにも見えなくてごめんな」
樹が写してくれた夜景は、文子もよく知っている夜景だった。



