意味がわかると怖い話【解説付き】

デート

「僕と付き合ってほしい」
「よろしくお願いします」
そんな風に交際が始まったのは3日前の放課後のことだった。

ずっと憧れていた同じクラスの隼人くんに呼び出されて告白された。
答えはもちろんOK!
そして今日は日曜日で、初めてのデートの日!

可憐は朝早くから目が覚めてしまって、あれでもない、これでもないと服を選んでいた。

昨日の夜に決めておいたコーディネートがあるものの、もっと可愛く見られたいという気持ちから再びクローゼットを開いてしまったのだ。

それからなかなか服が決まらなくてあっという間に約束の時間が近づいてきた。
「もう! 結局最初に選んでた服になっちゃった」
ブルーのワンピースに白いカーディガン。
初夏のデートにふさわしい、爽やかな服装だ。

約束場所の駅前までバスを使って移動して、大時計の下で隼人くんが来るのを待つ。
ずっと憧れていた人だし、人生始めての彼氏ということで可憐の心臓はドキドキしっぱなし。

ふたりきりになっても会話に困らないように、動画サイトで話題になりそうなものも見てきた。
「大丈夫大丈夫、昨日は視線も感じなかったし」

そう呟いてから、ふと嫌なことを思い出して顔を伏せた。
実は最近学校の行き帰りで人の視線を感じることがあったのだ。

視線がする方を振り向いても誰もいない。
だけど視線を外すとやっぱり誰かに見られているみたいに感じる。

その視線は可憐の体に絡みついてきて、粘つくような雰囲気があるからすぐに気がつくのだ。
普通の人なら、そんないやらしい視線を送ってくることはないから。

それが気持ち悪くて沈んだ気持ちになることもあった。
だけど今日はデートだ。
そんな嫌なことは忘れてしまおう。
気を取り直してそう思ったときだった。

一瞬その視線を感じた気がして振り向いた。
顔を向けた先にいた隼人と視線がぶつかったかと思うと隼人は右手を上げて「おまたせ!」と、駆け寄ってきた。

「ま、待ってないよ」
突然現れた隼人にドキドキしてしまって、さっきの視線のことは完全に忘れてしまったのだった。

ふたりでパンケーキを食べて、ゲームセンターでぬいぐるみを取って、楽しい時間を過ごしているとそんな緊張もほぐれてきた。

「僕には頼れるお兄さんがいるんだ。僕の願いを、何でも叶えてくれる魔法使いみたいなんだ。学校は違うけど、仲良しだよ」

お兄さんのことを魔法使いと呼ぶなんて、かわいい人だなぁ。
「へぇ、二人兄弟なの?」

「あぁ。お兄さんとは双子なんだ」
「そうなんだね! あ、あれかわいい!」

可憐はうさぎのぬいぐるみが入ったユーフォーキャッチャーへと走っていく。
そのときだった。
後方からまたあの視線を感じた。

粘つくようないやらしい視線。
「本当だ、かわいいね」
「ねぇ隼人くん、ちょっと相談してもいいかな?」

「どうしたの?」
「実は最近視線を感じてて……」

可憐が最近の出来事を説明すると、隼人が抱きしめてきた。
突然の抱擁に可憐は目を大きく見開いて固まってしまった。

「もう大丈夫だよ可憐ちゃん。だって、僕が一緒にいるからね」
そのとき可憐はすぐ近くに粘つくような視線を感じたのだった。