意味がわかると怖い話【解説付き】

千羽鶴の習わし

お母さんが入院したのは一週間前のことだった。
夕飯の買い出しに出たお母さんは信号無視の車に突っ込まれてしまったのだ。

緊急手術に緊急入院で、その日のことはあまり覚えていない。
それくらい私もバタバタしていてあっという間に過ぎて行ってしまったから。

手術が無事成功したあと、お父さんと一緒に先生からこのまま目覚めない可能性もあると聞かされてショックで1日中泣いていたことだけは覚えている。

それから一週間、お母さんはまだ目が醒めない。
「なにしてるの?」

放課後教室に残ってお母さんへ当てた千羽鶴を折っていると、友達のノリちゃんがやってきた。
ノリちゃんはこの小学校の吹奏楽部で、教室に楽譜を忘れたので取りに戻ってきたみたいだ。

「お母さんに千羽鶴を作ってるの」
「そっか、リョウちゃんのお母さん入院してるんだっけ」

リョウちゃんの表情が少し曇る。
でもすぐに気を取り直したように自分の席へと走った。

「それならこれ、一枚あげる!」
持ってきてくれたのは金色に輝く折り紙が一枚握られていた。
「わぁ、ありがとう!」

キラキラ輝く折り紙は簡素な病室を彩るのに最適だと思って、受け取った。
「それじゃ、部活行ってくるね」
「うん。頑張ってね」

ノリちゃんに手を振り、さっそくもらった折り紙で鶴を折り始めたのだった。
「千羽鶴はもう少しで完成か?」

夕飯の席でお父さんがそう聞いてきた。
千羽鶴は家でも作っているから、お父さんも時々手伝ってくれる。
「うん。あと5羽で終わりだよ」

「そうか。そしたらお母さんに持っていってあげられるな」
「そうだね」
お母さん、喜んで目を覚ましてくれるかな。

「でも、気をつけろよ? この辺の習わしでは1001羽折ってしまうとそれを受け取った人は治らなくなると言うからね」

「わかってるよ。最初にちゃんと千枚数えてあるから、大丈夫」
私はごちそうさまと手を合わせて食器をシンクへと運んだ。
さぁ、残り5羽だけだから今日中に完成させよう!

その一週間後、お母さんが死んだという連絡が病院から入った。