そっか。みんながそのスイーツ科の『涼真くん』とクロくんを見間違えただけなのかもしれない。

 だいたい、いくらイケメンだからって、入学式でちょっと顔を見ただけで、そんなに正確に覚えていられるわけないよね?

 危なかったーっ!

 もしわたしがクロくんをみんなに紹介したら、「ニセモノに用はないんだけど」って怒られるところだったよ。


 そもそもわたしは、スイーツ王子たちとは出会っていない。

 クロくんたちはスイーツ科の一般生徒で、わたしが作ったプラバンから生まれたスイーツの擬人化男子なんかでもない。

 うん、これで間違いない。


「ごめんね。ありがとう! なんだかちょっとスッキリしたよ」

「う、うん……そう? なら、よかった」

 わたしが明るくお礼を言うと、わたしをバカにしたように笑っていた女の子たちが、ぽかんとした顔でわたしのことを見る。


 なあんだ。あー、スッキリした。


 ——それじゃあ、あのプラバンはどう説明するの?


 別の自分が、そう問いかけてくる。


 だから、あれはイチゴくんが自分で作ったんだってば。

 ただそれだけのこと。


 今はごちゃごちゃ考えてるヒマなんかないんだから。

 そんなことをしている余裕があるなら、お菓子の勉強を少しでもするの!


 そう自分に言い聞かせると、自分の席に戻り、『お菓子作りの基礎基本』という分厚いテキストを開いた。