スイーツ王子は甘くない⁉

 家に帰ると、さっそくクローゼットの中を漁る。

 ドキドキしながらランドセルを引っ張り出し、何度か深呼吸をしてからポケットの中を見る。


「……ない」


 たしかに、ここに入れたはずなのに。


 ……いやいや、こんなありえないことを考えたって仕方ない。

 勉強だ、勉強。


 転科試験には、実技試験だけじゃなく、お菓子の知識を問われる筆記試験ももちろんある。

 すでに四月も終わりが見えてきている。

 転科試験は、五月のゴールデンウィーク明けすぐの土曜日。

 今日から試験日までは、学校の通常授業の課題プラス筆記試験対策もしなくちゃいけないんだから。


 こんなヘンなことを考えてる場合じゃない。


 クロくんたちが……あのプラバンから生まれたんじゃないか、なんて。


 お話の世界じゃないんだから。

 擬人化男子?

 そんなこと、あるわけがない。


 ランドセルの中に入ってないってことは、きっとわたしがいつか捨てたんだ。

 イチゴくんが持っていたのは、きっとイチゴくんが同じように作ったもの。

 ただそれだけのこと。


 ぶるぶると首を左右に振ると、わたしはランドセルをクローゼットの中に戻して机の前に座った。