スイーツ王子は甘くない⁉

 水が沸騰して、2、3分が経過。


「えっと、そろそろいい感じ?」

「なにを言っているんですか。とりあえず4、50分はそのまま様子を見てください。そうしたら、一度硬さを確認してみましょうね」

 ニコニコしながらアズくんがとんでもないことを言う。


「そ、そっか。結構時間かかるんだね」

「そうですね。硬い豆が柔らかくなるまで煮なくてはいけないので」


 いや、まあ、でも、クッキーやケーキを焼くのにだって、結構時間かかったしね。

 それに、クッキー生地を一時間冷やしたり、スポンジケーキを一晩寝かしたこともあったっけ。

 おいしいスイーツを作るには、時間がかかるってことなんだ。


「では、待っている間に、お抹茶でもいかがですか?」

「わぁ、ぜひぜひ! でもわたし、一度も飲んだことがなくて。お作法とか、難しいんだよね?」

「大丈夫ですよ。僕が教えますから。それから、心愛さんと一緒に食べようと思って、桜餅も作っておいたんです」

「桜餅! わたし、大好き」


「ところで心愛さん。桜餅には、関東風と関西風の二種類あるってご存知でしたか?」

「えっ、二種類もあるの⁉」

「ふふっ。いい反応いただきました。では、すぐに準備をするので、しばらくお待ちくださいね」

 そう言うと、アズくんは棚の方へと歩いていき、抹茶茶碗や、お抹茶を点てるのに使う茶筅などを取り出し、戻ってきた。