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「ただいまー」


 あっ、お母さんたち、帰ってきた!

 ドキドキドキドキ……。


 オランジェットの箱に、『いつもありがとう』っていうカードをつけて、ダイニングテーブルに置いておいたんだ。

 早く見つけてくれないかな。


 どんな顔をするか気にはなるけど、わたしは机の前に座ったまま。

 だって、今日の課題がまだ終わっていないから。

 ちゃんと勉強もするっていう、お母さんたちとの約束も守らないと。


 トイレに行くために部屋を出たときに、暗くなったダイニングをそっと覗く。

 箱の上に、『おいしかった。ありがとう』っていうメモが乗っていた。


 よかった。食べてくれたみたい。

 ホッと胸をなで下ろす。


 もちろん、これだけで認めてもらおうだなんて、甘いことは考えてないよ?

 最初はちょっとだけそんな邪なことも考えちゃったけど。


 それよりも、困っている人たちを助けるお仕事をしているお父さんたちに、感謝の気持ちを伝えたいなって。


 今日、あの男の子と出会って、改めて思ったから。

 お父さんたちのお仕事の大切さを。


 だからね、今日は、そんな気持ちを込めてプレゼントしたかったんだ。


 もちろん、お菓子作りのことを認めてほしいって気持ちもあるけどね。


 でも、まだなにも結果を出せていないから。

 ちゃんとお父さんたちを説得するのは、それからだよ。