「おねえちゃん、やっぱこれ、もらってもいい?」

「うん、どうぞ」

 男の子が、オランジェットの袋を開けて、ぱくっと大口で頬張った。


「うまっ。こんなんオレ、はじめて食った。自分で作れたら、毎日食えるんだ。いいなあ、おねえちゃん」

 食べ終えると、男の子は大きくブランコをこぎはじめた。


 よかった。元気になってくれたみたいで。

 まだ本当の意味で解決したわけじゃないけど、笑顔が見れて、本当によかった。


 弁護士のお仕事も……お父さんとお母さんのことも、すっごく尊敬してる。

 だから、なりたくないわけじゃないんだよ?


 でも、どっちかを選ばなくちゃいけないとしたら、わたしはどっちを選ぶんだろう。


 お菓子作りの道か、弁護士の道か。


 ……そんなの、どっちかだけなんて、やっぱり選べないよ。


 でも、どっちもだなんて欲張りなことも、できるわけないし。


 ……ううん、こんな難しいこと、今から考えたって仕方ない。

 まずは転科試験に合格しないとなんだから。


 ぶるぶるっと頭を左右に振ると、頭の中から余計な考えを追い出した。