スイーツ王子は甘くない⁉

「そっか。そうだったんだね」


 うーん、ネコかぁ……。

 さすがに犯人……というか、犯ネコ? を捕まえても、証言させられないしなぁ。


 ——こういうとき、お父さんたちなら、この子のことを助けてあげられるのかな。


 そう思ったら、なにもできない自分がもどかしくて、悔しくて。

 男の子と同じように、鎖をぎゅっと握り締める。


「……そうだ。ねえ、他に目撃者……ネコが逃げてくとこを見てた子はいないの?」

「他に? わかんない。あっ、でも二階から覗いてたヤツがいたかも。『ネコだ!』って声が聞こえた気がするし」

「じゃあさ、その子を探して聞いてみたら? ひょっとしたら、ネコが悪さしてるとこも見てたかもしれないよ」

「そっか……そうだね。おねえちゃん、ありがとう! 明日学校行ったら、オレ、探して聞いてみるよ」

 男の子の顔が、光が差したようにぱっと明るくなる。


「うん、がんばれ! そうだ。おねえちゃん、いいもの持ってるんだ」

 お父さんたちにあげるために箱詰めしたオランジェットを一袋取り出し、男の子に差し出した。


「これ、おねえちゃんが学校で作ったの。よかったら食べて」

「すげーっ。おねえちゃん、こんなの作れるの?」

 男の子が、瞳を輝かせてわたしを見る。


「うん。まだ勉強中なんだけどね」

「あ、でも……」

「あ、そっか。知らない人からお菓子もらっちゃいけないって、おうちで言われてるよね」