スイーツ王子は甘くない⁉

 だけど、作ってみたいっていう気持ちがどうしても抑えきれなくて、その気持ちをぶつけるようにして、プラバンにスイーツの絵をいっぱい描いたんだ。


 イチゴのショートケーキに、サックサクのクッキー。

 あんこいっぱいもっちもちの大福に、さっき男の子にもらったみたいなまん丸なトリュフチョコレート。


 絵が描けたら、くしゃくしゃにしたアルミホイルをオーブントースターの網の上に敷いて、プラバンを乗せて加熱する。

 なんだかお菓子を焼いているみたいで、ちょっとだけワクワクしてきた。


 しばらくすると、うねうねと波打ちながら、プラバンが縮んでいく。

 縮むのが止まったら、急いで取り出し、重し代わりの本で挟んで、上からぎゅっと押してキレイに平らにして。


「できた!」

 小さな小さな、わたしが作ったスイーツたち。

「……」


 わかってるよ。こんなことしたって、むなしくなるだけだってことくらい。


 あの男の子みたいにとびっきりおいしいお菓子が作れる人しか、こんな夢を持っちゃいけないんだ。

 ——自分の作ったお菓子で、みんなを笑顔にしたい、だなんて。


 お母さんに見つからないように、わたしはランドセルの小さなポケットにそのプラバンを放り込んだ。