スイーツ王子は甘くない⁉

「そうだ! 前に、おいしそうなのを見たことがあるんです。名前は忘れちゃったんですけど、砂糖漬けの輪切りにしたオレンジを、チョコレートコーティングしたお菓子。たしか、オレンジ……なんとかっていうんですよね?」

「なるほど。オランジェットか」

 そうつぶやくと、クロくんが材料の棚へと歩き出す。

「オレンジコンフィ——輪切りの砂糖漬けから作っていたら時間がかかりすぎるから、今回は市販のものを使う」


 クロくんが棚から取り出したのは、砂糖漬けのオレンジとレモン、それにパイナップル。

 袋から適量のフルーツを取り出し、順番にチョコレートでコーティングして、オーブンシートの上に並べていく。

 チョコレートが固まったらできあがりだ。


 うわぁ、これ絶対おいしいヤツだよ。

 さっそくひとつ手に取りぱくりっ。


「う~ん! オレンジの酸味と苦みが、チョコレートの甘みとコクに合いすぎる~」

 あまりのおいしさに、次々と手が伸びる。


 はぁ~、レモンもパイナップルも、どれもおいしい。

 けど、一番はやっぱりオレンジかなぁ。


「これに入れて持って帰るといい」

 そう言ってクロくんが手渡してくれたのは、ラッピング用の小袋と箱。


 そっか。がんばってるよって、お父さんたちに見てもらうチャンスだ。


「はいっ! ありがとうございます」


 ひとつひとつ小さな袋に入れてから、箱の中にキレイに並べていく。

 うわぁ、なんだか宝石箱みたいにキラッキラして見える。

 お父さんたち、なんて言うかなぁ。

 ふふっ、楽しみ。