スイーツ王子は甘くない⁉

***


 パレットナイフ の先にチョコを取り、テンパリングのチェックをするクロくん。

 ドキドキドキドキ……。


「合格」

「やったーっ!!!!」

 思わず飛び上がって喜ぶわたしを見て、クロくんが苦笑いする。


 でもでも、そのくらいうれしいんだもん!


「迷いも吹っ切れたみたいだな」

「あー……、正直に言うと、ちゃんと説得できたわけではないんですけど」

 わたしが苦笑いを浮かべると、クロくんの眉がぴくりと動く。


「でも、試験を受ける許可は、ちゃんともらえました! なので、まずは試験に向けて、全力でがんばろうと思ってます」

「そうか」

「あの、聞いてもいいですか?」

「なんだ?」

「クロくんは、どうしてチョコレートの勉強をしようって思ったんですか?」

 わたしが尋ねると、クロくんがふいっとわたしから顔を逸らす。


「……聞かない方がいい。心愛が思っているより、ずっと不純な動機だ」


 不純って……。

 え、ひょっとして、あの店長さん……だったりして。


 いやいや、さすがにそれはないよね?

 だって、『こーんなに小さかったとき』って言ってたし。


 でも……そういうこと、なのかな。

 あの店長さんに近づきたくて、チョコレートの勉強をはじめた……?

 いや、でも、さすがにそんなこと……。


 グルグル考えながら、ちらりとクロくんの方を見る。


「なにを考えているのか知らんが、さっさとなにを作るのか決めてくれ」

「あ、そ、そうですよね!」


 どうしよう? さすがにまたマンディアンじゃあ、食べるのも飽きちゃうし……。