スイーツ王子は甘くない⁉

 クロくんに、こんなことを言ったって仕方ないんだけど。

 だって、これは100%わたしの問題なんだから。


 でも、聞いてほしかった。

 こんなの、わたしの甘えでしかないけど。


「なら、特訓の続きは、親とちゃんと話をしてからだな」

 しばらく考え込んでいたクロくんが、きっぱりとそう言い切る。


 やっぱり、そう言うよね……。

 わかってたけど、ショックが大きい。


「どうして言えないんだ? 本当にやりたいことなら、ちゃんと言えるはずだ。そのくらいの覚悟がなければ、絶対に続けられない」


 クロくんの強い言葉に、じわっと涙が滲む。

 その涙を見られないように、わたしは顔をうつむかせた。


「心愛には、そのくらい強い覚悟があると感じた。だからこそ、特訓を買って出たんだ」


 ……え?


「先生に必死に転科したいという強い思いをぶつける心愛を見て、助けたいと思った。あれは本心じゃなかったのか?」

 やっぱり、あのときわたしの背中を押してくれたのは、クロくんだったんだ。


「本心です! わたし、どうしてもスイーツの勉強がしたいんです。だから……ちゃんと両親にも言います」


 わたしの作ったスイーツで、みんなを笑顔にするっていう夢を叶えるために。


「うん。わかった。それじゃあ明日、ここで待ってる」

「はい、よろしくお願いします!」


 絶対に両親を説得して、明日は特訓の続きをする。

 決意を込めて、わたしはぎゅっと拳を握り締めた。