「どう? おいしい?」

 そーっと目を開けると、シロくんのキレイなお顔がすぐそばに……!


「お、おいしいよ?」

 っていうか、そんなふうに近くで見られてたら、味なんかほとんどしないんだけど⁉


「ふふっ。よかった」

 どぎまぎするわたしを見て、シロくんが満面の笑みを浮かべている。


 もうっ。シロくんってば、わたしのことをからかって、おもしろがってるでしょ。


「もうすぐチョコの特訓も終わりだね」

「うん! そしたら、あとは和菓子だけ。あともうちょっとだよ」

「……ねえ、心愛ちゃん。転科しなくても、ぼくたちがずーっと心愛ちゃんにお菓子作りを教えてあげる。それじゃ、ダメ?」

「え、なに言ってるの? だって、転科試験に合格するために教えてもらってるのに。大丈夫だよ。わたし、絶対に合格してみせるから。だからね、スイーツ科で、わたしのこと待ってて、シロくん」

「うん。……わかった。がんばれ、心愛ちゃん」

 なぜかわからないけれど、シロくんの笑顔がなんだか寂しそうに見える。


「それじゃあ、後片づけして、帰ろうか」

 わたしがなにか言う前に、シロくんは立ち上がって片づけをはじめた。


 わたしだって、みんなにこうやって教えてもらう時間が終わっちゃうのは寂しいけど……ううん、そんなこと言っちゃダメ。

 だって、みんなの大切な時間を割いて教えてもらっているんだから。


 うん。この前はクロくんとお出かけして買いそびれたけど、今日こそ材料と道具を買って帰って、家で特訓しよう。