スイーツ王子は甘くない⁉

***


「温度確認。それから、氷水につけたままにするな。あっという間に固まるぞ。こまめに氷水から出せ」

「はい!」

 放課後になるとすぐ、クロくんの特訓開始。


「だから湯煎にかけたままにするな。こまめに出せ。温度が上がりすぎたらやり直しだぞ」

「はい!」

「温度確認」

「はい!」

 必死にクロくんの指示に食らいつく。


 わたしも、昨日食べたフォンダンショコラみたいにおいしいチョコレートのお菓子が作れるようになりたいから。

 そのためにも、まずはチョコレートとちゃんと仲よくならなくちゃ。


「どうですか?」

 テンパリングがちゃんととれているかの確認。

 ドッキドッキで結果を待つ。


「固まりが悪いな。ツヤがないし、若干だが白く曇っている。最後温度を上げすぎたな。それから、全体的に攪拌が足りてない。ボウルの出し入れに気を取られすぎず、攪拌もしっかりすること。だが——前回よりは成長している」

「本当ですか……?」

 ぱぁっと顔を輝かせるわたしを見て、クロくんが苦い顔をする。

「あくまでも前回よりも成長している、と言っただけだ。まだ合格点には届いていない」


 でも、前よりは成長してるんだよね?

 はぁ~、よかったぁ~。


「まったく。ポジティブなヤツだな」

 喜びを隠しきれないわたしを見て、クロくんが呆れた顔をする。


「次こそ、絶対に合格を勝ち取ってみせます!」

「ああ、ぜひそうしてくれ」

 そう言い残すと、クロくんは実習室を出ていった。


 また自分の作業をしに行ったのかな?

 ひょっとしたら、この前クロくんが個室でやっていたのって、お店の商品作りだったのかも?