スイーツ王子は甘くない⁉

「まったく。こーんなに小さかったときは、とってもかわいかったのに。すっかり生意気になっちゃって」

 店長さんが、小さくため息を吐く。


「この子ね、『ぼくを弟子にしてください!』って、店に押しかけてきたのよ? 小学校二年生くらいの頃だったかしら」


 ふふっ。小さい頃のクロくんかぁ。

 店長さんが言うように、きっととってもかわいかったんだろうなぁ。


「だから、おまえは想像するな」

 顔に出てしまっていたのか、そっこーでクロくんからツッコミが入る。


「だから。『おまえ』って言っちゃダメだって言ってるでしょ?」

 腰に手を当て、怒った顔をする店長さんに、クロくんがふてくされた顔をする。


「…………心愛」

 クロくんが、わたしから顔をそむけ、ぼそりと言う。


「うん、よろしい」

 満足げな表情を浮かべると、店長さんは店の奥へと戻っていった。

 その背中を見送りながら、クロくんが大きなため息を吐く。


「あのっ、今日は本当にありがとうございました。とっても勉強になりました! ……って言っても、ただおいしく食べちゃっただけなんですけど」

「素直すぎ」

 クロくんが、思わずといった感じで小さな笑い声を立てる。


「でも、わたしもこんなおいしいチョコを作れるようになりたいって、すっごく思いました。また明日からの特訓もがんばるので、よろしくお願いします!」