スイーツ王子は甘くない⁉

 さっそく目の前のフォンダンショコラにナイフを入れると、とろ~りと中からチョコレートがあふれ出す。

 トロトロのチョコレートを絡めてまずは一口ぱくりっ。


「ん~~!!」

 濃厚なチョコレートが口の中いっぱいに広がって、幸せすぎる~。


 次は、バニラアイスと一緒にぱくりっ。


「はぁ~~、おいし~い」

 温かいチョコレートと冷たいバニラアイスの組み合わせが、もう最っ高!


「うまそうに食うな」

 クロくんが、片方の口角をわずかに上げる。


 え……ひょっとして、笑ってる?

 うわわっ、めちゃくちゃレアなものを見ちゃったんじゃない⁉


「おまえ、ニヤニヤしすぎ」

 じっと見つめていたら、クロくんが顔をしかめた。


「こらっ。女の子のことを、『おまえ』なんて呼ばないの。あなた、お名前は?」

 店長さんが、わたしの前にホット紅茶を置きながら尋ねる。


「春風心愛です」

「心愛ちゃんかあ。かわいい名前。とっても似合ってる」

「あ、りがとうございます」


 そんなふうに言われたの、はじめて。なんだか照れちゃうよ。

 だって、こんなにかわいい名前なのに、わたし自身は全然地味子すぎで、名前負けしてるとしか思ったことなかったから。


「いちいち出てこなくていい」

 クロくんが、店長さんに向かってぶっきらぼうに言う。