スイーツ王子は甘くない⁉

 わわっ、この人が店長さんだったんだ!

 それにしてもクロくんは、どうしてわたしをここに連れてきてくれたんだろう?


「うまいものを食べることも勉強のうちだ。温かいうちにさっさと食え」

 わたしの心の声が聞こえたかのようなタイミングで、クロくんがそんなことを言う。


「そのフォンダンショコラね、うちのイートイン限定商品の中で、一番人気なの。今日は平日でそんなに混雑していないし、ゆっくりしていってね」

 パチンッとウインクすると、店長さんは再び店の奥へと戻っていった。


「店長さん、ステキな方ですね。それに、このお店も」

 店長さんのあったかい雰囲気とカッコよさが、そのままお店の雰囲気にもにじみ出ているみたいで、とっても居心地のいいお店だ。


「……だから、さっさと食え」

 そう言って、クロくんがトリュフを口の中に放り込む。


 言葉は相変わらず不愛想なんだけど、なんだかちょっとだけクロくんの表情がうれしそうに見えるのは、気のせいじゃないと思うんだけど……。

 ひょっとして、クロくんのタイプって、ああいう大人の女性なのかな。


 そんなことを考えていたら、なぜかまた胸がズキッと痛んだ。


 もうっ、余計なことばっか考えてないで、早く食べよ。

 せっかくクロくんが、勉強のためにここに連れてきてくれたんだから。

 いっぱい勉強して帰らなくっちゃ。