スイーツ王子は甘くない⁉

『いつもの』って……クロくん、ここの常連さんなの?

 こんなところで毎日のように食べられるなんて、すっごいお金持ちってこと⁇


「ここ、俺の職場だから。お金のことは気にしなくていい」


「『俺の職場』って……」


「俺が作ったチョコを置かせてもらってる」


 それってつまり、ここでクロくんが作ったチョコを売ってもらってるってことだよね?


「すごい……。そんなことまでできちゃうんですね」

「俺なんかまだまだだ。日々勉強させてもらってる」


 わたしからしたらすでに雲の上のような存在なのに、まだまだだなんて。

 クロくんが見ている世界は、きっとわたしからは見ることもできないくらい高いところにあるんだろうな……。


「おまたせ。フォンダンショコラと、いつものヤツね」

 さっきの店員さんが、わたしとクロくんの前にお皿を置く。


「うわぁ……」

 フォンダンショコラに添えられたバニラアイスと生クリーム、それにラズベリーソースがすっごくオシャレ。食べるのがもったいないくらい!


「クロくんの、それはなんですか?」


 お皿の上に置かれたふたつのトリュフ。

 まったく同じように見えるんだけど……。


「俺の作ったヤツと、店長のヤツ」

「こうやって定期的に食べ比べて、あたしと自分の差を測ってるんだって。もうほとんど変わらないくらいだっていうのに、ほんと向上心だけは人一倍高いのよねー。それよりも、あたしとしては、もうちょっと対人スキルを身につけてほしいところなんだけど」

 そう言って、ため息を吐く。