スイーツ王子は甘くない⁉

「うわぁ、チョコだ」

 思わず声が出てしまい、慌てて口を押さえる。


 わたしの方をちらりと見た男の子が、大きな口を開けてまん丸のチョコレートを放り込んだ。

 思わずごくりとつばを飲む。


 すっごくおいしそう。

 お母さんに言わなかったら、バレないかな。

 うぅっ。でも、お母さんにナイショだなんて、すっごく悪いことをしている気分。

 でも、せっかくくれたんだし……食べても、いい、よね?


「……い、ただきます」

 男の子のマネをして一口でチョコを頬張ると、口の中いっぱいに甘いチョコレートが広がった。

 舌触りがなめらかで、いつも食べてるチョコレートとは全然違う。


「おいしい。これ、すっごくおいしいよ!」


 こんなにおいしいチョコレート、食べたのはじめて。


「なんだ。ちゃんと笑えるじゃん」

「え……?」

「さっきまで、すごい暗い顔してたから」

「あ、あれっ、おかしいなぁ」


 男の子に指摘されたのが恥ずかしくて、自然と上がってしまう口角を元に戻そうと必死になったけど、全然戻ってくれない。


「別に笑ってればいいだろ。俺が作ったチョコで笑ってくれたら……俺もうれしいし」

「えっ。これ、君が作ったの⁉」

 勢いよくわたしが言うと、男の子がふいっと顔をそむける。

 そのそむけた顔が、なんだかほんのり赤くなっているみたい。