スイーツ王子は甘くない⁉

　これ以上クロくんを見ているのがツラくなってきて、視線を逸らそうとしたそのとき、ふっと顔を上げたクロくんとバチッと目が合ってしまった。


　やばっ。見てるの、バレちゃったかも。


　ぱっと顔をうつむかせると、歩調を速め、気づいてないふうを装って、校門を通り抜けようとする。


「おい、どこに行くつもりだ」

　目の前にぬっと現れた人影に、ぴたりと足を止める。

　もちろん、人影の主はクロくんだ。

「えっと……今日の特訓は中止だって言われたので、買い物に……」

「急ぎの用があるわけではないんだな？」

「はい。そうですけど……」

「なら、一緒に来い」

「へ⁉」

　思わずヘンな声が漏れる。


「え、マジ？」

「あれって、春風さんだよね？」

「スイーツ王子と知り合い⁉　あの二人、ひょっとして付き合ってんの⁇」

　周囲のザワつきが大きくなったことに気づいているのかいないのか、クロくんはわたしの手首をガシッと掴むと、大股で歩きはじめた。


「へ⁉　いや、ちょっと、あのっ……」

　小さな悲鳴が背後で聞こえる。


　いやいやいやいや、これ絶対誤解が誤解を生むパターンだから——っ！！！！