よしっ、まずは材料の買い出しからだ。

 翌日の放課後 、小さな冒険に行くみたいにワクワクしながら校門に向かって歩いていくと……なんだか校門周辺がザワついてる?

 なにかあったのかなぁ?


「ねねっ。あれってスイーツ王子じゃない?」

「誰か待ってるのかなあ?」

「やっぱ顔面整いすぎ。あたしもあんな人と待ち合わせしてみた~い」


『スイーツ王子』という単語に、思わずぴくりと反応する。

 いったい誰がいるんだろう?


 校門の方に目を向けると、黒い頭が見える。

 あれは……きっとクロくんだ。

 自分の練習で忙しいから、今日の特訓は中止なのかと思っていたんだけど。

 ひょっとして、誰かとデートの予定が入っていた、とか……?


 ……そうだよね。彼女がいたって、全然おかしくない。

 いやむしろいない方がおかしいくらいだよ。

 まあ、ちょっと不愛想で怖いけど、チョコレート作りに集中している姿は、カッコよすぎるくらいカッコいいと思うし、きっと彼女のことだって一途に愛する人なんだろうな……。

 そんなことを考えていたら——。


 ズキッ。


 感じたことのないような鈍い痛みが胸に走る。

 なんだろう、これ。