スイーツ王子は甘くない⁉

「焦らなくても大丈夫だよ。試験までまだ時間もあるし、心愛ちゃんができるようになるまで、いつまでだってボクは付き合うからね。なんなら他のお菓子作りはナシにして、ずーっとボクと一緒にケーキ作りをしててくれてもいいんだけどなー」

 そう言って、ほわっとした笑みを浮かべるイチゴくん。


「……どうしてわたしにここまで親切にしてくれるの?」


 そう。これは最初から疑問だったんだ。

 どうしてみんなここまでわたしのためにしてくれるんだろう?

 わたしが初心者すぎて、見てられないからかと思っていたんだけど、さすがにそんな理由でここまで付き合ってくれるなんておかしいし。


 先生にわたしの指導を頼まれたから?

 それなら、なおさらこれ以上時間を取らせるわけにはいかないよ。


「ふふっ。それはね、心愛ちゃんの『お菓子作りがしたい!』っていう強い思いがあったからだよー」

「そんなの、スイーツ科にいる子たちなら、みんな一緒だよね?」

「そうかもしれないね。でも、ボクたちは心愛ちゃんのそんな強い思いが……ううん、やっぱりなんでもない」

 ごまかすように、ニコッと笑うイチゴくん。


『そんな強い思いが』……なに⁇

『なんでもない』なんて言われると、余計に気になるんだけど。


 わたしがなにか言う前に、イチゴくんがもう一度口を開く。

「とにかく、ボクたちはがんばる心愛ちゃんの応援がしたいんだ。その気持ちは、きっとみんな同じだよ」

「うん。ありがとう」


 今は、素直にイチゴくんたちの気持ちを受け取っておこう。

 わたしにできるみんなへの恩返しは、ちゃんとスイーツ科の転科試験に合格することだ。