特訓初日。今日の先生は、エンくんだ。

 白のコックコートにエンジのエプロンとコックタイがとっても似合っていて、イケメン度も五割増しに見える。


 よく考えたら、ウワサのスイーツ王子にマンツーマンで特訓してもらうなんて、ものすごいことなんじゃ……き、緊張してきた……!


「なんだよー、そんなにオレのこと見つめて。オレにホレたらヤケドするぜっ」

 そんなことを言って、シャキーンとキメ顔をするエンくん。


「……」


 えーっと……いきなり反応に困るんですけど。


「おい、ちょ……黙んな! そこ笑うとこだろ、ハズイだろうが」

 なんて言って、エンくんが若干頬を赤らめている。


 いやいや、どう考えたってエンくんがおかしなことを言うから悪い……って、そっか。わたしの緊張を和らげてくれようとしてるのかな。

 ふふっとわたしが笑うと、エンくんも恥ずかしそうに笑い返してくれた。


「そんじゃ、今日はクッキーを作っていこうか」

「はいっ」

「ひと言でクッキーっつっても、絞り出しや型抜き、アイスボックスクッキーみたいに生地をカットしたり、スノーボールクッキーみたいに生地を手で丸めて作るヤツもあるんだが——」

 そう言うと、メモ帳とペンを持って必死にメモるわたしの方をエンくんがチラッと見る。

「今日は、アイスボックスクッキーを作ってみようと思う」

「アイスボックスクッキー?」