スイーツ王子は甘くない⁉

「なあんだ。クロ、優しいとこあるじゃない」

 さっきの色素の薄い男子が言う。


「えっと……け、結構です。一人でなんとかするので」

 わたしが拒否すると、クロくんが一瞬ぽかんとした顔をする。


 まさか断られるとは思ってもいなかったのかな。


 いやでもだってさ、怖いんだもん、この人。

 あんな調子で毎日怒られたら、お菓子作りがキライになってしまいそうだよ。


 ハッと我に返ったクロくんが怖い顔で迫ってくる。

「『結構です』? こんな状態で、余裕だな。一ヶ月後の試験に、本当に間に合うとでも思っているのか? 今までに作ったことのあるスイーツは? スイーツ作りはいつからやっている?」

「えーっと……今日が、はじめて……」

 わたしの答えを聞いたクロくんが、ふたたび大きなため息を吐く。

「今まで誰一人合格したヤツはいないんだぞ? わかってるのか?」


 そ、そうだった。

 でも、だからといって、クロくんにつきっきりで指導してもらうっていうのは……。


「ボクたちなら、手取り足取り一から十まで全部教えてあげられるんだけどなー」

 究極の選択を迫られ、言葉に詰まっていると、四人のキラキラ男子たちの方からそんな声が聞こえてきた。

「ま、本気で転科したいってわけじゃないならいいわ」

「そうだね。ムリして新しいことに挑戦するより、今まで通り特進科にいた方が心愛ちゃんにとっては幸せなのかもしれないしね」

「何事も無理強いはいけませんね」