学校の敷地の北側にある校門を入ると、キラキラ輝く白亜の教会のような校舎が、通路を挟んで左右に一棟ずつ建っている。
ここは、私立夢見学園。
わたし、ここの生徒になりましたっ!
東側の特進科専用校舎に向かって歩いていくのは、わたしと同じ黒のブレザーにタータンチェックのボトムスの生徒。
西側はスイーツ科専用校舎で、特進科と同じチェックのボトムスに白のブレザーを着た生徒が歩いていく。
いいなぁ。真っ白なブレザーだけじゃなく、なんだか笑顔までキラキラ輝いて見えるよ。
わたしもあの白のブレザーが着たかったな……。
そんなことを考え、ため息が出そうになったとき——。
「ねえ、あれって春風心愛さんじゃない?」
「ああ、あの首席合格の?」
ヒソヒソ話す声が聞こえてきたかと思ったら、突き刺さるような視線があちこちから向けられる。
カバンの持ち手をキュッと握り締め、大きなメガネをかけた顔をうつむかせると、わたしは昇降口へと向かう歩調を速めた。
だからやりたくなかったのに……。
実はわたし、昨日の入学式で、新入生代表あいさつをしたの。
毎年、入試の成績が一番だった子がやることになっているらしいんだけど……。
そんな決め方じゃなく、もっとみんなの前でも物おじせずに話せる子にやってもらえばいいのに。
小学生の頃は、ずっとぼっちで、日陰の存在だった。
そんなわたしに、まさかステージの上に立って大注目を浴びる日が来るなんて、思ってもみなかったよ。
入学式が終わったあとも、みんなからのライバルを見るような視線が怖い。
こんなところでこれから三年間、わたし本当にやっていけるのかな……。



