スイーツ王子は甘くない⁉

 実習室の入り口の方から別の男子の声が聞こえ、ちらりと視線を向けると、四人の男子が室内に入ってくるのが見えた。

「ごめんねー。クロってば、チョコレートへの愛がハンパないからさ。心愛ちゃんはスイーツ作りの初心者なんだから、ちゃんと一から説明してあげなきゃわからないのにね」

 そう言って、わたしの目の前の男子——クロくんっていうらしい——の代わりに申し訳なさそうな顔で謝ってくれたのは、色素の薄い髪色で、髪の毛と同じ色の瞳を持つ、見たこともないくらいキレイな男の子。


 ううん、その子だけじゃない。

 目の前のクロくんも、あとから入ってきた男子たちも、みんな見たこともないくらい整った目鼻立ちをしていて、発光してるんじゃないかっていうくらいキラキラ輝いて見える。


 あれっ? そういえば、特進科の女子がそんな人たちのウワサ話をしていたような……。

 ひょっとして、この人たちがウワサの『スイーツ王子』⁉

 でも、どうしてわたしの名前を知っているんだろう?


「話は先生に聞いた。おまえ、スイーツ科の転科試験を受けるんだってな」

「は、はい……」

 わたしの答えを聞くと、クロくんがふんっと鼻で笑う。

「それでこのザマか。チョコを直火にかけちゃいけないなんて、基本中の基本だ。そんなことも知らないでスイーツ科の生徒を名乗られたら、こっちが迷惑だ」

「ご、ごめんなさい」

 思わずじわりと涙が滲む。