翌日の放課後。

 今なら、誰もいないかな?

 キョロキョロと左右を見回し、ささささっとスイーツ科の校舎へと忍び込む。


 いや、別に悪いことをしているわけじゃないんだけどね。

 先生の許可だって、ちゃんともらっているし。


 スイーツ科への転科試験には、実技試験もあるらしく。

 その練習のために、スイーツ科の校舎にある調理実習室を借りられることになったの。


 実習室内の材料は、自由に使ってもいいんだって。

 もちろん、スイーツ科の生徒になれば、その材料を使って放課後は自習し放題!

 すごいよね! スイーツ科に合格したら、わたしきっと毎日下校時刻ギリギリまで実習室に入り浸っちゃうよ。


 スイーツ科の校舎に一歩足を踏み入れると、大きく深呼吸する。

 はぁ~~、甘くていいニオイ。

 人のいる気配はほとんどしないけど、どこかの実習室で、誰かがお菓子作りをしているのかも。


 先生に借りたカギで、一年生用の調理実習室の扉を開けると、おそるおそる室内に足を踏み入れる。

「おじゃましまぁす……って、わたしが今カギを開けたんだから、誰もいるわけないか」